『17才の帝国』は、そのタイトルだけでなく、内容もまた想像力を刺激する挑発的な作品だった。

 政治AIが、十七歳の高校生を総理大臣に選ぶ。舞台となるのは“202X年の実験都市”だから、近未来どころでない。GDPも大きく落ち込み、失業者も増大した日没国家だ。

 政府は目玉政策として、AIによる実験都市、UA(ウーア)を地方の青波市に創設する。AIソロンは十七歳の高校生、真木亜蘭(神尾楓珠)を総理に任命した。他の三人の閣僚も二十五歳以下の若者だ。


神尾楓珠(写真は5/28放送より)

 神尾が演じる真木の容貌に圧倒的な迫力がある。最近の若者には稀な、潔癖さと優しさを併せもつ神尾の“昏い”表情が、私たちをまず魅了した。

 実験都市UAには三本の無線塔が聳えている。美しい海と街を見下ろす無線塔が、三基のスパコンとして光を放つ姿の映像美が、近未来SFを象徴している。

 真木がUAの総理として最初に提言したのは、市議会の廃止だった。旧青波市の市長である保坂(田中泯)を始め、既得権益を持つ守旧派は猛反対。

 AIソロンは即座に全市民にVRグラスを通して、総理の提案への賛否、総理の支持率、幸福度などを可視化して見せる。若干の変動はあるが、真木の支持率は確実に上昇してゆく。

 ここまでが序盤だ。議会制民主主義ではなく、AIを駆使した直接民主主義の可能性に、私も反応した。

 総理補佐官に選ばれた茶川サチ(山田杏奈)は、総理の真木に恋愛にも似た感情を抱いている。しかし真木がときに漏らすユキという名を気にしている。そして総理官邸の奥で、真木と話すAIのユキを見て、サチは嫉妬と嫌悪を抱く。

 UAは人気低落中の鷲田総理(柄本明)の切り札だが、UAの十七歳総理の人気を妬み、腹心の官房副長官、平清志(星野源)に、真木を切ることを命じる。守旧派vs.改革派の構図はステロタイプに映る。

 AIのユキは、十歳で死んだ真木の幼なじみだ。混乱したサチは平にその秘密を密告する。新鮮味のない恋愛要素が入り、ドラマの尖鋭さが鈍った。

 腹黒い政治家に疑念を持ち始め、真木の性格と政治に親近感を抱きだした平の立ち位置が重要になったとき、恋愛ドラマと、大人vs.若者の抗争に傾斜した。

 しかも鷲田内閣の成立間もなく発覚した政治献金疑惑で死んだ第一秘書の一家の娘が十歳のユキだった。政争や公安が暗躍するドラマにならなければいいが。

 予告ではAIの反乱が示唆された。『2001年宇宙の旅』のHALじゃないか。予定調和の恋愛と政治を排して、幸福度って何かと突きつける危険なドラマを作るには、AIの暴走は必要かも。映像、テーマ、音楽。どれもが光る。

INFORMATION

『17才の帝国』
NHK 放送終了
https://www.nhk.jp/p/ts/VNXRGXV8Q3/

(亀和田 武/週刊文春 2022年6月16日号)