〈あらすじ〉

 小さな家が立ち並ぶ住宅街で、初老男性のオットー(トム・ハンクス)は、数年前に最愛の妻に先立たれて以来独りで暮らしている。毎朝近隣をパトロールし、ゴミの分別や駐車のルールを守らない人を叱り飛ばし、挨拶をされても仏頂面のオットーは町の厄介者だ。長年勤務した会社も退職した彼は、自らの人生を終わらせようとする。

 ところが、向かいに越してきたメキシコ人一家のマリソル(マリアナ・トレビーニョ)の訪問により計画は失敗。その後もおせっかいで陽気なマリソルに振り回されるうちに、オットーに変化が訪れる。

〈解説〉

 スウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』のリメイク。孤独な男性が生きる希望を見出していくヒューマン作品。監督は『プーと大人になった僕』のマーク・フォースター。126分。

中野翠(コラムニスト)

★★★☆☆人嫌いになった男のはずが案外コロリと改心。もっとイジワルのほうが喜劇味が出たのでは? 郊外の風景と暮らしに注目。

芝山幹郎(翻訳家)

★★★☆☆偏屈と寛容を穏やかに描くのは悪くないが、観客を操作しようとする匂いがたまに漂う。ハンクスも本気の芝居ではない。

斎藤綾子(作家)

★★★★☆昔はご近所に1人はいた、モラハラで世話好きでパワハラでお人好しが。彼の生き辛さが幸せの手綱と気づく展開に涙。

森直人(映画評論家)

★★★☆☆2015年のスウェーデン版が主演俳優の求心力を強化した「トム・ハンクス映画」に変換。何はともあれ予定調和の安心感。

洞口依子(女優)

★★★☆☆一見、他の俳優でも成り立つと思うも、周囲の登場人物との噛み合わせが案外面白い。辛口なハンクスもたまにはいい。

INFORMATION

『オットーという男』(米)
3月10日(金)より全国公開
https://www.otto-movie.jp/

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年3月16日号)