〈あらすじ〉
1953年、パリ。モンマルトルの広場で、シルクのイブニングドレスを着た、若い女性の刺殺体が発見される。遺体には5カ所もの刺し傷があり、ドレスは赤い血で染まっていた。被害者の身元を示すものはなく、目撃者もいない。
事件を担当するメグレ警視(ジェラール・ドパルデュー)は、被害者が着ていた高級ドレスを手がかりにして捜査を開始。彼女が送った孤独な人生を紐解いていく。
〈解説〉
ジョルジュ・シムノンの〈メグレ警視シリーズ〉を、1989年にシムノンの『仕立て屋の恋』を監督した名匠パトリス・ルコントが映画化。名警視が殺人事件の謎に迫りながら、一人の女性の素性と生涯を解き明かすヒューマンミステリー。89分。
中野翠(コラムニスト)★★★☆☆メグレ警視を演じたのはG・ドパルデュー。そのキャスティングに、やや疑問。時代色、パリの路地、衣装を愉しんだ。
芝山幹郎(翻訳家)★★☆☆☆メランコリックな気配といえば聞こえはよいが、語り口に血流が感じられない。謎解きがムード作りのテコにされている。
斎藤綾子(作家)★★★☆☆パリの暗い街並みが身寄りのない娘の生気を吸い取るよう。G・ドパルデュー演じる警視の眼差しが絶望の物語に合う。
森直人(映画評論家)★★★☆☆ルコント×シムノンの相性に期待したが、ムード設計の強度に比べ意外と展開力に乏しい。監督の本領発揮にはもう一歩か。
洞口依子(女優)★★★★☆深い憂鬱と後悔のメグレとドパルデューとルコントの相性◎。彼は古い街自体の様にパリを移動し憂鬱な終盤へと誘う。

©2021 CINÉ−@ F COMME FILM SND SCOPE PICTURES.
INFORMATION
『メグレと若い女の死』(仏)
3月17日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
https://unpfilm.com/maigret/index.html
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年3月23日号)