「よくよくお話を聞きますと、『マグロの柵の端っこはお客に出すべきではない』とおっしゃるんです。確かにその切り身は端っこではありましたが、決して小さな切り身ではなく、美味しく食べられるところとして板長が出したものです。そう説明しても、『板長を呼べ、謝らせろ』とお怒りは収まりません。でも、私としては謝る理由がないのです。『俺は鮮魚関係の仕事をしている。納得がいかない』とお客様の言い分はエスカレートするばかりでしたので、『申し訳ありませんが、お泊めできません』と、そのご家族には帰って頂きました。家長としての面子でしょうか、奥様やお子さんたちの手前、引くに引けなかったんでしょうが……」

理不尽なクレーム、女将はどう対処する?

 女将と言えば、お客へのクレームに平身低頭で謝り続けるイメージがある。はるみ女将のように、毅然とした態度を見せるのは珍しい。

 その判断基準はなんだろう?

「時間です。私の経験から40分程話して見極めます。怒りを収めてくださるお客様は、そもそも40分までかからずに解決の兆しが見えてくるものなのです。

 それが30分だと短くて、1時間を超えると、かえって終わらなくなるんです。もちろん謝る時はしっかり謝りますが、あまりにも違うだろうという時は、『お引き取り下さい』とお帰り頂きます。というのも理不尽なクレームによって、従業員が自信をなくしてしまうんです。スタッフの士気を保つのも、女将としての大切な仕事ですから」

 そしてこの40分で、もうひとつ見極める要素があるのだそう。