うつの状態にありながら、自分のことを客観的に、しかも正確に分析できる人はまずいない、と加藤医師は指摘する。なぜなら、うつの原因となるようなつらい記憶は、心の奥底に仕舞い込まれていることが多いからだ。強いストレスを伴う問題をつねに考え続けることは、心の負担が大きすぎる。だから人は、無意識のうちにその問題を心の奥に隠すことでストレスを遠ざけ、自分を守ろうとするのだ。

「うつ症状を招いている本質的な原因を見つけるには、やはり精神科医や臨床心理士による手助けが必要です。精神療法や心理療法を通じて、体調を崩している本当の原因を見つけ出せる可能性はあります」

 最も危険なのは、勝手に原因を決め付ける“素人診断”なのだ。


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(2)うつの本人ではなく、家族が受診してもいい

 家族がうつと思われる症状を示していながら、当人を医療機関に連れていくことが難しいケースはある。そもそも「精神科」や「心療内科」という診療科に対して抵抗感を持つ人は少なくない。

 また、自分がうつであることを認めようとしなかったり、うつであることを周囲に認めてほしくない気持ちが強いケースもある。

 そんな時は、無理やり当人を医療機関に連れていくのではなく、まず家族だけで医療機関を受診する、という方法もアリだ。

「配偶者や親など家族の話から、家庭の内部に隠れている問題が見えてくることは珍しくありません。その話を元に、間接的なアドバイスをすることも可能です」

 前の項でも触れたが、うつ症状を引き起こしている原因が家庭内にあることは少なくない。その場合、配偶者や親のように“心の距離”が近い人が医師のアドバイスを受けることで、セラピスト的な役割を担うことができることもあるという。


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患者の家族がまず健康であること

 もちろん、家庭内に問題がないケースでも、家族の話から当人のうつの状態を評価し、緊急性の有無や治療開始のタイミングを見極めることもできる。

 何より、どうやって当人を受診させればいいのか――という、家族にとっての大きな問題を、専門家に相談できるメリットは大きい。

「どう接していいのか分からずに困惑している家族の不安を取り除くことは、うつに苦しんでいる当人にとっても重要なこと。家族の不安が大きいと、患者自身がそれを察知して、苦しい胸の内を家族にさえ伝えられなくなることもあるのです」

 不安は伝播する。うつの治療を進める上で、患者を支える家族がまず健康であることが大原則なのだ。