川崎・登戸で発生したスクールバス殺傷事件、元農林水産省の事務次官による息子殺害事件、そして京都アニメーションの放火殺人事件……。令和元年は、世間の耳目を集める事件が立て続けに発生した。

 これらの事件に共通しているのは、「孤独な男たち」が登場するという点である。登戸事件の岩崎隆一容疑者、農水次官の熊沢英昭容疑者に殺害された44歳の長男、京アニを襲撃した青葉真司容疑者。数多の報道から溢れ出る情報には、彼らが心の奥に人知れず抱えていた“闇”が映し出されていた。

 男たちを追い詰めたものは何だったのか――。『言ってはいけない』の著書がある作家・橘玲氏が 「文藝春秋」8月号 で、これらの事件が起こる社会的背景を分析した。


登戸で発生したスクールバス殺傷事件の現場 ©松本輝一/文藝春秋

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 内閣府の調査によれば「40〜64歳のひきこもり状態の人」は全国に61・3万人で、15〜39歳の「若年ひきこもり」と合わせて100万人を超えたという。だが秋田県藤里町で、地域からの情報提供を受けたソーシャルワーカーが「あなたのお宅に、ひきこもっているお子さんがいらっしゃいますよね?」と一軒一軒確認したところ、人口3800人、65歳以上が43・6%という典型的な「高齢化した地方の町」にもかかわらず、「18歳以上55歳未満で、定職をもたずに2年以上経過した者」が113人もいることがわかった。

 対象年齢に占める「ひきこもり」比率は8・74%、男性が女性の約2倍で、40歳以上が半数ちかくにのぼることも明らかになった。