「顔、白くなったな」

 事件発生から1カ月が過ぎた2019年7月、蒸し暑い東京・杉並警察署の面会室。熊沢英昭被告(76)と半世紀以上の付き合いがある元官僚の男性は、被告にそう語りかけた。

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「息子があの世で穏やかに過ごせるよう祈りを捧げる」

 長男・英一郎さん(当時44)を刺し殺したとして殺人罪に問われた元農水事務次官の熊沢被告に、12月16日、懲役6年の実刑判決が下った。裁判長の言葉に深くうなずき、熊沢被告は、実刑判決にも動揺を見せなかった。

「起訴内容は争われず、弁護側が求めた執行猶予が認められるかが焦点でした。公判では妻や熊沢被告に対する長男の壮絶な家庭内暴力、妻の自殺未遂が明らかになったものの『(長男の)主治医や警察など外部に相談できた』などとして実刑が相当とされました」(司法担当記者)


同居1週間後の凶行だった

「鉛筆の芯を思い切り手のひらに……」母が語った息子の家庭内暴力

 約半年におよぶ拘置所生活では、元同僚や友人などが度々面会に訪れていた。冒頭の男性は数回にわたって面会。普段通りに声を掛けても、ジャージ姿の被告は淡々と受け答えするだけで、あちらから何かを尋ねてくることは無かった。

「心配していたほどの憔悴ではありませんでしたが、その表情から心の中を読み取ることはできませんでした。『奥さんはどう?』と聞くと、健康状態が良くないと言っていたのを覚えています」(面会した男性)

 その妻は公判で証言台に立ち、長男からの家庭内暴力について赤裸々に語った。

「暴力は中学生から始まった。肋骨にヒビが入り、顔に青あざができた。鉛筆の芯を思い切り手のひらに突き刺されたこともあった」

 そして家族のもう一つの悲劇にも触れた。