トヨタの最高級車レクサスの暴走による死亡事故で、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)などで起訴された元東京地検特捜部長の石川達紘弁護士(80)に対する初公判が2月17日午後、東京地裁で開かれた。

 車載の事故記録装置などをもとに「運転操作を誤った」とする検察側に対し、石川側は「車に不具合があり勝手に暴走した。(石川の)過失はなかった」と無罪を主張。石川が無罪となれば、トヨタの技術の粋を凝らしたレクサスに何らかの不具合があったことになり、トヨタのブランドは大きく傷つく。

 かつて「特捜検察のエース」と呼ばれた男と日本ナンバーワンの巨大企業との法廷闘争が始まった。(敬称略)

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東京地方裁判所 ©iStock.com

「被告人に過失はなく、無罪である」公訴事実を全面否認

「天地神明に誓って、アクセルペダルを踏んだことはありません。踏み続けたこともありません」

 17日午後1時半すぎ、東京地裁426号法廷。黒っぽいスーツに水玉のネクタイ姿の石川は起訴状に対する罪状認否で、まず事故で亡くなった被害者の遺族らに「心からお詫び申し上げます」と哀悼の言葉を述べたあと、起訴事実を全面否認した。

「車を停車中、待ち合わせの人が来たのでシートベルトを外し、ドアを開けて右足を外に出したところ、車がゆっくり動き出した。右足はドアに挟まれ、左足も宙に浮いたまま、車は加速して暴走。死ぬと思って気を失った。その後、運転状況を再現する実況見分で、足がブレーキやアクセルに届かないことが判明。(人を待つ間)運転席のシートを後ろにずらし、足がブレーキやアクセルに届かない状態にしていたことを思い出した」などと用意した書面を読み上げた。弁護側も「被告人に過失はなく、無罪である」と主張した。

 一方、検察側は、石川と示談が成立した被害者の遺族の供述調書の要旨告知で、遺族が「厳罰を求めない」との示談条件を受け入れたが、処罰感情がなくなったわけではない、とする調書の内容を紹介した。

 この日は、検察側、被告側双方が冒頭陳述書を朗読。検察側による物証や関係者の供述調書の要旨告知と、事故車に搭載されていた事故記録装置(イベント・データ・レコーダー、EDR)を解析した警視庁交通捜査課交通鑑識係の警察官と、トヨタ自動車の技術担当社員に対する検察側の主尋問が行われた。

 石川は、検事時代、数々の特捜事件の捜査にかかわり、権力犯罪を暴いてきた。ロッキード事件の公判では、証人として法廷に立ったこともある。しかし、被告人席に座るのは初めての経験だ。名前や本籍などを確認する裁判長の人定質問では、答える声も低く、ややかすれたが、罪状認否では、声に力を込めた。