「文藝春秋」6月号の特選記事を公開します。(初公開:2020年5月19日)

 上智大学教授の水島宏明は、元日本テレビディレクターとして「ネットカフェ難民」問題をいち早く取り上げるなど、リベラル派かつ「敏腕」と呼ぶにふさわしいメディア人である。

 ここ最近、彼が連日実況するかのように「ニュース」として配信してきたのが、視聴率が絶好調の「羽鳥慎一モーニングショー」と玉川徹の話題だった。

 その水島が、4月28日「スクープではないか?」といち早く記事化した玉川徹発言は誤りだったとして、自らの記事を訂正することになった。水島が取り上げた発言自体は、いつもの玉川節だ。


玉川徹氏 ©文藝春秋

玉川は事実誤認だったと翌日訂正

 玉川は東京都の検査が土日は民間任せになっており、「番組のスタッフが確認しているんですけど、39という件数は全部これ民間の検査の件数なんです」と発言し、行政の検査体制を鋭く批判した。

 水島もこれに乗っかり「スクープではないか?」「報道の人たちは、行政が発表する数字をそのまま伝えるのではなく、この番組のように『自ら調べる』という姿勢を示してほしいと思う」と大いに持ち上げてみせた。

 ところが、これは事実誤認だったとして、玉川自身が「潔く」非を認め、翌日の番組で訂正することになる。

 前段がいささか長くなってしまったが、注目すべきは水島のコメントだ。彼は「結果的に、玉川のコメントを信頼し、その取材力や見識を日頃から評価していた筆者は、玉川が『誤報』する可能性などつゆほども疑わ」なかったという。

 私が驚いたのは、訂正そのものよりも水島の反応だ。水島のような一流の経歴を持つメディア人にして、玉川は「誤報」する可能性がないと思わせる存在になっている――。

百田尚樹との近似性

 私は「文藝春秋」6月号に寄稿した「 モーニングショー 玉川徹の研究 」の中で、周辺取材や過去の著作をもとに、一貫して官僚への疑念をむき出しにし、しかし自分が言いたいことを言うためにも「視聴率」=マスは意識する……そんな彼を「ポピュリスト」であると指摘した。

 ポピュリスト・玉川の姿勢はリベラル派というよりも、右派的なツイートで常に物議をかもす作家・百田尚樹のそれと近いように思えるとも書いた。玉川についての詳細な検証は本誌に、百田については『 ルポ百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地 』(小学館、6月17日発売)に譲るが、重要なポイントだけを書いておく。

 多くの人は、百田は安倍政権に最も近いベストセラー作家で、玉川は安倍政権に批判的なはずで何が近いのかと思うはずだ。だが、そうした見方は間違っている。テレビ構成作家出身の百田、生粋のワイドショー屋である玉川は根本的な姿勢において近似する。その根本の姿勢こそがポピュリズムだ。