都市部を中心に、「ウーバーイーツ」の配達パートナーが四角いカバンを背負って必死に自転車を漕ぐ姿はすっかり日常風景となった。 

 新型コロナ禍において「外出自粛」が推奨されたことで宅配サービスの需要は増しており、同時にコロナで仕事を失ったり、自分時間が増えた人が参入したことで配達パートナーも激増。 

 各地で事故やトラブルも多発しており、あくまでウーバーとの間に雇用契約はなく、個人事業主とされる配達パートナーの労働問題や、補償問題なども取り沙汰されるようになった。 

 当事者である配達パートナーたちは、いまどういった状況でバッグを背負い、どんな心境で自転車を漕いでいるのか。話を聞いてみた。 (素鞠清志郎/清談社)

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始めて早々、「ウバッグ狩り」の被害に

「僕は2020年の5月から始めたんですけど、完全に出遅れましたね(笑)。競争率は激しいし、ブーストもあまりつかない。先輩からはもっと稼げるって聞いてたんですけど……」 

 須田康夫さん(仮名・34歳)の本業は劇団に所属する俳優。ただし、まったく売れていないので、普段はラーメン屋でアルバイトをしていたという。週6でシフトに入り、月収は18万円ほど。それで生活費をまかなっていたが、コロナ禍によりラーメン屋が時短営業になってしまった。


須田康夫さん(著者提供)

 収入が減ってしまった須田さんが劇団員の先輩から勧められたのがウーバーイーツの配達パートナーだった。 

「時間も自由だし、効率よくやれば月10万以上は軽く稼げるといわれました。自転車は持っていたし、あとはバッグがあれば始められる。さっそく登録して、4000円のデポジットを払って専用バッグを手に入れ、あとは稼ぐだけ、と気合いも入ってたんですが、このバッグを自転車にくくりつけて家の前に置いといたら、翌日バッグだけ盗まれてしまって……」 

 “ウバッグ”と呼ばれる、四角いウーバーイーツ専用ケースは、新規の配達パートナーが増えたおかげで一時的に品不足に。配達にあたっては、このウバッグを使用しなければならない決まりはないのだが、やはり配達パートナーにとっては一番人気のようで、オークションサイトなどで高額で転売されるケースが続出。バッグだけを持ち去る「ウバッグ狩り」も横行しているという。