廊下やエレベーター、駐車場は共用だから「NG」

 実際にコロナ患者を診ている開業医も多いとA氏は強調するが、一方でクリニックを経営する開業医が、コロナ患者を診ようとする場合は、「ハードルが高い」という。

「私の知り合いの開業医は、都心でテナントのクリニックを経営していました。そこで発熱外来を行おうとしたのですが、クリニックが入っている同じビルには、飲食店やアパレルなど、ほかの業種の店や会社も入っています。共用廊下やエレベーターなどは、それらのお店のお客さんや従業員も使う。そこにコロナの可能性がある患者が来るのは『まかりならん』とビルのオーナーから反対が出て、断念せざるを得なかったそうです。

 また、別の私の知り合いの呼吸器系の開業医は、診療所の駐車場スペースを使って、コロナを疑われる患者を診ようとしたが、やはり近所から『コロナの疑いがある人が近所に集まるのは怖い』と文句を言われてしまって、周囲の理解を得ることができなかった。コロナ患者を診たい、命を救いたいという医者の善意による行動が、誹謗中傷のもとになってしまったのです」

「開業医は対策不十分のまま感染リスクにさらされている」

 A氏はむしろ開業医こそ、コロナ診療の「最前線」に立っていると話す。

「コロナの厄介なところは、初期の軽症段階が一番感染力が強いこと。やや熱っぽい、もしかしたらコロナかもと思って発熱外来にやってきている患者さんが、一番感染力が強いのです。重症化した患者を救う医療従事者も大変ですが、われわれ開業医は、発熱外来やPCR検査のお手伝いなどでコロナが疑われる患者を最初に診ることになる。つまり最初にコロナ感染のリスクにさらされているのは、開業医でもあるのです。実際に開業医で感染した人もいますし、残念ながらその感染の結果亡くなった人もいます……。

 どの科の開業医も、自分の職場では万全の感染症対策を施すようにしています。待合室でクラスターが発生したら、その風評被害は計り知れませんから。私のクリニックでは感染予防のために診察室や待合室の席をパーティションで仕切ったり、感染予防のためのマスクや手袋を揃えたり、換気扇を作る、空気清浄機を買う、エアロゾル対策のできる新規機器に入れ替えるなどしましたが、それだけで300万円近くかかりました。国から出る医療機関への持続支援金は上限が100万円です。もちろんそれがないよりかはマシですが、きちんとしたコロナ対策をしようとしたらとても足りません。