手術失敗を苦にして自殺した14歳少年も…多数派なはずの“仮性包茎”が“恥ずかしい”ものになってしまった理由とは から続く

 仮性包茎は医学上、病気ではなく、手術の必要性もない。しかし、「そのままでは女性に嫌われる」といった喧伝から、手術に走る男性は後を絶たなかった。こうしたコンプレックス商法はいったい誰の手によって、どのように市場をつくりだしてきたのだろうか。

 ここでは、社会学者である澁谷知美氏の著書『 日本の包茎 男の体の200年史 』(筑摩書房)を引用。コンプレックス商法で包茎手術が一大ブームとなった背景、そして、男性性を手玉に取り、包茎を「商品」にした仕掛け人の言葉を紹介する。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

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手術の不要性と消費者問題

 メディアの側も、包茎手術が広まるのをただ傍観していたわけではなかった。1994年と96年に、雑誌『AERA』と『DENiM』が異なる観点から包茎手術ビジネスを批判する記事を出している。

『AERA』は「包茎手術大国を生んだ性文化の未熟」と銘打って、病気でない包茎への手術が医学的にいかに無意味であるか、それなのに男性たちや男の子を持つ親たちがいかに翻弄されているか、を専門家への取材をふまえつつ報じている。背景には人びとの圧倒的な知識不足がある。病気ではないために泌尿器科医は真剣に取り上げず、性教育でもきちんと教えられていない。そこに「包茎ボーイじゃ結婚できないぞ」などと、包茎ビジネスの広告が脅しをかけ、不安ばかりがふくらんでいくのだと記事は分析している(*1)。

*1 『AERA』1994年4月11日、64頁


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 別の号の『AERA』では、手術でひどい目にあった男性たちと、施術をしたクリニックの両方に取材することで、包茎ビジネスの闇を深掘りしている。ギザギザ模様の縫合跡をつけられてしまい、「しない方がよかった」と肩を落とす元仮性包茎の26歳自営業のほか、亀頭のブツブツを治すつもりで行った病院で包茎手術もされ、予算の5倍以上の治療費をとられた29歳公務員が登場している。勃起時に12センチあった公務員のペニスは手術後に7センチになってしまった。再手術を2回しても治らず、すべてに自信がなくなり、縁談が破談になった。

 浪人時代に受けた包茎手術が失敗し、意気阻喪して大学受験も失敗した25歳、アルバイト代をためて受けた手術でペニスに醜痕がついたうえ、なかに縫合糸が残っており、ふたたび高い料金を払って再手術を受けた20歳も登場している。全員に共通していたのは、雑誌広告を見て手術を決心し、病院を選んだことだった。

(中略)

『DENiM』は二度にわたって、仮性包茎の手術に保険が効かない健康保険制度の矛盾をあばく記事を掲載した。厚生省(当時)は、真性は疾病扱いだが仮性はそうではないので保険が効かないと説明する一方、仮性をあたかも病気であるかのように記す病院の冊子にかんしては、病院内で配布する印刷物は医者に一任していると答える。