なぜ姐さんと呼ばれるのか

溝口 基本的には、ヤクザ社会には女はいないということになっているんです。だから飯炊きでも掃除でもなんでも、みんな男の末端組員がやるわけです。普通は奥さんがやることも、男どもがやる。基本は男だけの世界ということになっている。

鈴木 その象徴が、姐さんという呼称ですよね。組長は親父なのに、奥さんはおふくろさんじゃなく姐さんという一つ格下の呼び名になる。相撲なんかの親方と女将さんに比べても格下でしょう。これもヤクザ社会の男尊女卑です。

溝口 そういう解釈もできる。

鈴木 ヤクザらしい理由もあるんです。昔はお縄になると、一族郎党が処分されかねないので、女房に累が及ばないよう身内扱いしなかったと言われています。家族を巻き込まないために、徹底してヤクザ社会は女人禁制となった。実際、明治までは、自衛策として女房と籍を入れなかったそうです。今も暴排条例のせいで、戸籍上、ヤクザの夫と偽装離婚するケースが増えました。母子手当などがもらえないんです。

 でもやっぱり、奥さんの助けが欠かせません。内助の功という以上に、姐さんの器量は組織力に直結します。姐さんが若い衆を使用人のように使うと、まともなヤクザなら怒鳴りつけます。でもやっぱりできの悪い姐さんはいるんです。そんなところは、若い衆の心が離れてしまう。

ヤクザの家族だと損しかない時代

溝口 けれど今は、ヤクザの家族は困りっぱなしでしょう。

鈴木 父親の職業にヤクザとは書けない。母親がパートに出たとしても、ヤクザとわかれば問題になります。刑務所に面会に行く際は、肉親が前提なのですが、内縁の妻にも同じ権利が与えられます。取材で姐さんに接する機会はあまりありませんが、時折、家族で東京ディズニーランドに遊びに来るので、車を出したりします。十分、ネタが拾える。

溝口 今やヤクザの家族だと、損しかないから。

鈴木 だから内縁が増える。もっとも、内縁関係だとヤクザにとっては愛人を奥さんと同格に扱えるというメリットもあるみたいです(笑)。