〈和也君。話は違いますが、以前、実家に電話をくれた時、和也の声が聞けてよかった。又、ばあちゃんと和也と3人で実家で住めたら良いのに、との、ばあちゃんの言葉が忘れられず、毎日、涙する。もう少し和也と一緒に過ごせると良いなあ、なんて思ったり、色々、後悔しています。

 

 姉も「和はたった一人の弟だから。姉弟だもん」と言ってくれたり、「和也大丈夫かな? 元気かな? この前手紙くれたよ。元気そうだった。ホッとした」と話してくれたり、週1〜2のペースで電話くれますよ。

 

 近所、いとこのおばさんやおじさんも心配してくれて、「和也は良い子だったのに、かわいそうな場面がいっぱいあったよ。ところで和也は元気かい?」と声をかけてくれたりしています。

 

 私の言いたい事は、和也は良い子で気がきく子だという事ですね。

 

 和也に会って話をしても言い足りないけど……〉

 しかし、自責の念や姉との絆の深さ、近所の住人や親類も案じていることなどを記した後、彼女は突然、息子を突き放す。

〈和也君の私物は受け取りますが、取りに行く事はできませんので郵送でお願いします〉

 手紙は急展開して息子への感謝の言葉で締められる。そこには母と息子のいびつな距離感が滲み出ている。

〈和也君、いつも心配してくれてありがとう。和也君、いつまでもお母さんとお姉ちゃんの側に居てくださいネ。お母さんの子供に生まれて来てくれてありがとう。また、出来たら、手紙書くから。又、会えたら良いな〉

「側に居てください」「また、出来たら、手紙書くから」と言いつつも、これまで一度も手紙を書かなかった母。親子の絆は、聖子が親の介護のために和也の元を去り連絡が途絶えたあの日から、壊れたままだ。

和也は「泣いてました。下向いて」

 犯行が明るみに出てからもう、7年になる。事件を受け聖子は一度だけ和也の面会に行った。和也は久しぶりに会えた母親を見ても恨みがましい言葉はなかった、と聖子は話した。

「まず顔を見に行ったというのと、何かあったら助けてあげなくっちゃっていうのですかね」

「その時の和也さんっていかがでした?」

「泣いてました。下向いて」

 和也はその後、何度も母親に手紙を書いた。だが聖子は、返信することもなければ会いに行くこともなかった。

 僕は約束どおり母親の手紙を和也に届けた。が、死刑確定後は面会が制限されるため、その後をうかがい知ることはできない。だから改めて母親を訪ねた。面会や手紙を送ることが出来なくなったいま、彼の気持ちを聞けるのは近親者だけなのだ。

〈どうして、いま頃……〉

 受け取った和也の反応は、おそらくこうしたものだっただろう。それは母親からの手紙に対しての、彼の反応で判断できることなのだが、その結末は後に伝える。