A子さんとX氏の交際は2018年10月から始まった。結婚に向けて進みだした手応えを感じていたA子さんにとって、これ以上ない幸せな日々だった。

「お互い仕事もあるので、週に1回ペースで赤坂にあるXのマンションで会っていました。『ブラジル人のクォーター』という言葉をつい信じてしまうくらい、Xは愛情表現がストレートなんです。『未来の奥さん』、『君は僕のものだよ』とか恥ずかしがることなく語り掛けてくれる。体型もラフなTシャツと短パンが似合って若々しかったです。

『A子の料理が食べたいなぁ』と言う彼のために、よく豚汁やカレーをせっせと作って持って行っていました。私が買った『ジェラートピケ』のお揃いのガウンを着て過ごす時間は幸せでした。何よりうれしかったのは、ずっと私の将来を心配していた母が、結婚を心の底から喜んでくれたことでした」

避妊せず「子供ができたら結婚すればいい」

 2人の交際は、当初から子供をつくることが前提だった。

「彼は『子供ができたら結婚すればいい』と、付き合ったその日から子づくりに積極的でした。なので避妊は一度もしていません。私も彼に引っ張られるように、妊娠を心待ちにするようになりました。毎月生理の時期になって『また赤ちゃんできなかった』と私が落ち込むと、Xは『A子の体が一番大事だよ。もし子供ができなくても、養子をもらえばいいじゃないか』と優しく抱きしめてくれました。この人と一緒だったら子供ができなくても幸せかもしれない、とさえ思うようになりました」

 子供には恵まれなかったものの交際は順調だった。しかし交際をはじめて約10カ月がたった2019年7月中旬のある日、A子さんの生活は一変してしまう。

 その日、A子さんは偶然ネットで見つけた保護犬のボランティア活動に参加することになっていた。A子さんはX氏に「横浜で犬のボランティアに行ってくるね」と告げ、家を出た。