「告発したら潰される」

 日本郵政グループの内部通報制度に重大な欠陥があることは、かんぽ生命の不正問題でも浮き彫りになっていた。

 2019年9月から立ち入り検査を実施した金融庁は、不正な保険営業などで社員の通報がありながら、それをコンプライアンス部門が積極的には調べず、担当部署に情報を横流しする例がある、などと指摘していた。

 たとえば、中部地方で保険営業に携わっていた郵便局員は2018年、不正を繰り返している疑いが濃い同僚の情報を、日本郵便の内部通報窓口に届けた。

 問題の社員は営業推進指導役という肩書で、地域の郵便局を回って保険営業の成績が上がるように指導する立場だった。だが、指導を名目に出向いた先の郵便局で、高齢客を相手にいい加減な説明で契約件数を伸ばす一方、相談を受けた家族からの抗議や申し込みの撤回が相次いだ。地元密着で働く郵便局員にとっては、指導役が契約件数だけ荒稼ぎして顧客の信頼関係を壊していくのは迷惑でしかない。

 通報した郵便局員は、コンプライアンス担当者から連絡を受け、不正な勧誘を目撃した状況や顧客の名前などを詳しく聞かれ、局員も保険の契約番号に至るまで詳細な情報を伝えたようだ。ところが、知りうる限りのことを伝えたあとに、こう言われた。

「我々が調査すると、通報者が捜されて特定される可能性もあるが、それでも大丈夫ですか」

 大丈夫なわけがない。通報した局員が「それは困る」と答えると、そこから話はうやむやになったと、悔しそうに職場でこぼしていた。不正の疑いがある同僚はその後も野放しで営業を続け、好成績で昇格もしていったという。

 この事例は、氷山の一角に過ぎない。通報制度に関する現場からの訴えは、ほかにも少なからず聞かれた。単に「調べてもらえなかった」ということにとどまらず、「通報者が特定されて恫喝された」「人事で飛ばされた」という趣旨の話もある。彼らが口をそろえて言うのは「告発したら潰される」ということだ。

(藤田 知也)