手元に、日本銀行を筆頭に26社が並ぶ手書きのリストがある。昭和11年に皇室が所有していた株式のリストで、所有株数や払込額も書かれている。これが収められているのは『昭和十一年度 宮内省豫算案』という極秘文書だ。ペンで「内大臣」とあるから、当時の牧野伸顕内大臣に説明するために書かれたものだろう。


マル秘とされた「予算案」

 このリストによれば、皇室が株式に払いこんだ金額は総額約6230万円。現在の貨幣価値で約1800億円(大卒初任給などと比較して2800倍に。以下同)で、ここから得られる配当収入は約150億円になる。所有株26社のほとんどが「特殊銀行」か「国策会社」だ。特殊銀行とは、特別な法律を基に設立した政府系金融機関のことで、日本銀行を含めて8行あるが、このすべてを所有している。国策会社は、南満州鉄道のように、国策を推進する目的で設立された半官半民の会社である。いずれも戦前の日本の屋台骨だ。

総額4400億円の資産

 図は、宮内省がこれら有価証券の購入時期を表したもので、戦前の皇室財産について長年研究してきた大澤覚氏の『戦前期皇室財政統計―内蔵頭名義の公社債・株券』をもとに作成したものだ。

 これ以外に国債、地方債、社債の配当、それに預金利息を加えると264億円。その他に新潟県に匹敵する面積の「御料林」から上がる利益が425億円で、収益の合計839億円が昭和11年度に見込まれる皇室の収益だ。ここへ国庫から繰り入れる皇室費が年に126億円あり、これらを合わせた965億円が昭和11年度の皇室予算となる。ちなみに、この年に皇室が持っていた有価証券や御料林の立木といった「財本」は総額4400億円にもなった。