アンケートは記名式だったのか、無記名だったのか

 爽彩さんが通っていた中学校の校長は、文春オンライン取材班の取材に対して、5月のいじめアンケートでは「あるという結果はあがっていないです」と回答した。このアンケートはどんなものだったのだろうか。記名式だったのか。それとも無記名だったのか。それによっても、子どもたちの回答は変わってくる。一般的ないじめアンケート内容では、これまでのいじめ事件でも詳細がわかっていないケースが多い。

 あるいじめ自殺事件では、毎年行われるいじめアンケートからいじめに関することが浮かび上がらなかった。しかし、自殺後のアンケートでは無記名で行われ、いじめの可能性がある内容が書かれていた。別のいじめ不登校では、生徒が担任に向けて手紙や作文を書き、いじめを訴える内容を記したり、中には「死にたい」と訴えたものもあった。

 文部科学省「国立教育政策研究所」の生徒指導・進路指導研究センターが発行する 「生徒指導リーフ」 (2015年3月)は、「いじめアンケート」について解説している。それによると、いじめの調査には「無記名式アンケート」を実施することになっている。「記名式アンケート」では「手遅れ」になり、現在進行中であればあるほど、「記名式」には回答しにくいためだ。

 4月の段階で母親が相談をしているが、この点を踏まえたアンケートだったのかどうかも気になる。それとも、毎年行われる一般的なアンケートだったのか。子どもは学校に対して、いじめについて隠す心情があると、白紙か、簡素な回答が多くなる傾向がある。どんなアンケートだったのだろうか。アンケートの回答に「いじめ」という言葉がなくても、「いじめがない」とは言えない。いじめの加害行為は、個別の行為によって判断されなければならない。「これがいじめ」という定型をイメージすると危険である。

「中学校から『いじめはない』との報告を受けていた」

 また、旭川市教委は「当時通っていた中学校から『いじめはない』との報告を受けていた」としている。詳細な調査が行われていない。市教委が調査前から「いじめはない」と判断した類似の例としては、茨城県取手市の中学生が自殺したときの対応がある。学校側が「いじめはなかった」と説明。いじめを隠したまま、アンケートを行ったが、市教委は「いじめによる自殺ではない」「重大事態ではない」と決議した。その上で、調査委を設置していたが、文科省の指導を受けて、調査委が解散となった。

 さらに6月になって、爽彩さんは川に飛び込んでいる。それによって警察も動いている。「いじめ防止対策推進法」では、「生命、心身又は財産に重大な被害」があった場合、それがいじめを原因としていれば「重大事態」となる。文科省の 「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」 (2017年3月)では、「事実関係が確定した段階で重大事態としての対応を開始するのではなく、『疑い』が生じた段階で調査を開始しなければならない」としている。