画期的な和解となった裁判

 その後、滝川市で亡くなった児童の母親は2008年12月、滝川市と北海道を相手に損害賠償を求めて提訴した。市側は、きちんと調査をしていないにもかかわらず、社会的に批判が集まったために、証人にたった担任(当時)が「自殺の原因は家庭にある」「調査委の内容は納得していない」などと主張する一幕もあった。しかし、最終的には2010年3月26日、札幌地裁で和解が成立した。この和解の交渉でも、遺族側は苦労し、弁護士を新たに加えることになった。

 裁判所は和解の前提事実として、「女子児童は小学校3年から長期にわたって同級生から仲間外れにされるなどのいじめを受けていた」と認定した。担任が注意深く観察していれば、いじめを認識できた。場合によっては、女子児童が自殺することも予見できた――などと判断していた。いじめの有無、安全配慮義務、いじめによる自殺の予見性を認めた内容で、画期的なものとなった。

このときの教訓は生かされなかった

 また、この和解では、次のような再発防止に関する内容もあった。

〈被告滝川市は、今後、本件と同種の事件について、真相究明のために、必要に応じて、第三者による調査等を行い、また、被害者及びその親族の意見を聴く機会を設ける〉

 これは、いじめ自殺が起きた自治体の当事者として、今後、いじめによる事件など「同種の事件」が起きた時のための第三者による調査委員会を設置するように促すものである。また、北海道に対しても、次のような再発防止策を求めている。

〈被告北海道は、本件と同種の事件の再発防止のため、本件和解調書の写しを北海道内の市町村教育委員会に送付し、同教育委員会に対し、本件和解の内容を教職員に周知徹底するよう指導する〉

 つまり、道教委に対して、いじめによる自殺などの再発を防止するために、道内の市町村教委に和解内容を送付し、教職員に周知徹底をするように指導することになっていた。しかし、旭川市での爽彩さんのいじめ凍死事件やその対応を見る限り、この和解内容が十分に周知されていないのではないかと思わせる。

(渋井 哲也)