「バリアフリー未対応」は法的に適合しないため、廃車の直接の理由になる。小田急ロマンスカーはもともと、軽量、低重心でスピードアップを実現してきた。しかし20000形RSEはその伝統をあきらめ、姉妹車の371系と同様に2階建てとなった。どちらも車両の年齢としてはまだまだ使える。しかし平屋建て車両もハイデッカータイプで、車椅子利用者が使いにくいという理由で引退した。富士急行に譲渡後は一部座席を車椅子対応に改造している。

新幹線で「ゆとりの列車旅」を

 総2階建て車両もバリアフリー対応の座席はある。E1系は一部車両に車椅子昇降用のエレベーターを設置した。E4系は車端部を平屋構造とし車椅子に対応した。E26系客車、285系電車も同様だ。しかし、国土交通省は「移動等円滑化促進方針・バリアフリー基本構想作成に関するガイドライン」を改正し、車椅子対応座席の増設を求めている。

 つまり、定員数増加を狙った総2階建て車両は新製しにくい状況になっている。山手線に2階建て車両が登場する日は来ないし、「のぞみ12本ダイヤ」の東海道新幹線で総2階建て車両が走る日も来ないだろう。

 E4系の引退に話を戻せば、上記3つの欠点に加えて、そもそも2階建てにするほどの乗客数が登場時ほど求められていない、という環境も関係しているかもしれない。路線全体のスピードアップを達成すれば列車の運行本数を増やせるから、定員924人のE7系12両編成で対応可能という判断もあるだろう。

 しかし、これら「2階建ての欠点」をすべて利点に転換すれば、とても楽しい列車ができる。2階建て、定員は少なく、速度も求めず、バリアフリーもしっかり対応した列車。そう、2階建て車両の究極進化形は、JR東日本の高級クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」のメゾネット個室のような車両である。

 東海道・山陽・九州新幹線の東京(新大阪)〜鹿児島中央間や、西九州新幹線フル規格全線開業後の東京(新大阪)〜長崎間、東北・北海道新幹線の東京〜札幌間で、総2階建てのクルーズ新幹線を走らせたい。実用一辺倒の新幹線で「ゆとりの列車旅」ができたとき、日本の鉄道は世界に誇れるほど成熟したといえるだろう。

(杉山 淳一)