ハローワークに通って仕事を探す毎日

〈帰郷後の予定ですが、スロースタートを切ることにしています。日払いの仕事で臨時のものであれば、1週間くらいのをやりますが、社会に自分の体を適応させてから、本格的にスタートです。それまでは、色々と身のまわりのものをそろえることにしています〉

 施設での生活を始め、毎日ハローワークに通って仕事を探すようになった山地だが、彼には3年間胸に秘め、気にかけていたことがあった。母親殺害の動機ともなった、憧れの女性・遠山久美さんである。山地は保護司に内山さんを通じて、久美さんの現住所が聞けないかと話したが、行方(ゆくえ)は探さないほうがいいと注意された。内山さんが明かす。

「山地君にとって彼女はかけがえのない存在で、その後についてもずっと気にしていました。彼曰く、彼女だけが自分をきちんと受け入れてくれたということで、悪口なども一切ありません。少年院の中からも、彼女がオカダトーイ(山地が通っていたおもちゃ屋)を辞めてからどうしているのか教えてほしいとの手紙が来ていました」

 当然ながら、内山さんから彼女の情報がもたらされることはなく、山地も諦めざるを得ない状況だった。後に山地が大阪で姉妹殺人事件を起こしたとき、彼女は山口市内に住んでいたことが確認されている。しかし、現在はすでに転居しており、行き先を辿ることはできなかった。

パチンコ店で働くことに

 一方、なかなか仕事が見つからない山地は、父親の知り合いだという西田定男さん(仮名)と施設で出会う。祭りなどで露店を出し、たこ焼きを売る“テキ屋”をやっている西田さんは、施設に出入りして入所者に仕事を斡旋していた。

 西田さんは父親がやっていたパチンコ店の仕事がしたいと話す山地に、住み込みで働けるパチンコ店を紹介した。そして山地は事件のことを隠して面接を受け、働けることになったのである。当時、彼は内山さんに次のような手紙を書いている。

〈待遇はかなり良い職場です。店長も他の役職も先輩たちも、気さくな人たちで、仕事の後、一緒に食べたり飲んだりしています。これは大切な事ですが、私の件は皆さん知りません。まあ、あたり前の事ですが〉