そんな強気の発言とはうらはらに、実際の感染状況は日増しに厳しくなるばかりだった。4月に入って第4波が本格化し、新規感染者数が一気に増加。中旬には大阪で1200人を超えて、病院で治療を受けられない患者が続出する医療崩壊が起きていた。

 通常の内奏では、首相からの話を聞くに留めることが多いという。この日、陛下がコロナ対策のご質問をなさったかどうかはわからないが、宮内庁関係者によれば、「菅首相の説明が腑に落ちないようで、複雑な表情をなさっていた」という。

両陛下のご信頼が厚いのは……

 陛下を知る元宮内庁職員はこう話す。

「陛下は論理的なお考えをする方なので、菅総理の『コロナに打ち勝った証のオリンピック開催』という根拠のない自信は、一体どこから来るのかと思われたかもしれません。

 両陛下のご信頼が厚いのは、政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長です。昨年4月と11月にお招きになり、ご進講前には、両陛下おそろいで国内外のデータや情報、他のウイルスとのちがいなどをお調べになったうえで臨んでおられた。ご進講の後は、変異株についてご関心を示されていました。

 陛下はまず知識を得られてから、次に現場で働いている医療、保育、介護分野の方たちにオンライン行幸をなさり、専門家を御所に招いて話を聞いてこられました。現場で命を張ってコロナと向き合っている関係者の中に入って行かれ、苦労や悲しみの声に耳を傾け、労われて来たのです。それだけに対策が十分に行われているのかどうか、ご心配なのです」

 雅子皇后は日本赤十字社名誉総裁であり、昨年11月には、陛下と共に日赤医療センターをオンラインで視察。その後、日赤関連の3病院をつないで看護師から聞かれた現場の話はお2人に鮮烈な印象を残したようだ。

 ジャーナリスト・友納尚子氏による「 天皇陛下の期待に背いた菅首相の『内奏』 」の全文は「文藝春秋」2021年9月号と「文藝春秋digital」に掲載されています。

(友納 尚子/文藝春秋 2021年9月号)