国・地方の本音を言えば「喫煙者にたばこをやめてもらっては困る」

竹山 しかし世界的にも日本でも、禁煙を推進する方向です。たばこのパッケージには「健康被害を及ぼす」と脅し文句が書いてありますし、街中でも飲食店でも吸っちゃダメですよという流れで、たばこをやめた人もたくさんいます。「税金を上げれば禁煙が進むからいいだろう」という考えはないんですか?

森信 いやいや、政府は、国民の健康に役立つから消費抑制のためにたばこを値上げすべきだとは考えていません。先ほど話題に出たように、たばこ税の約2兆円という数字はだいたい消費税1%弱ですから、それをしては何のための増税かということになります。

竹山 みんながたばこをやめてしまったら、国は困るということですね。ではもっといえば、「みんな、たくさんたばこを吸ってくれ。そうすれば税収が上がるんだ」というのが国の本音でしょうか。

森信 本音を言えば、国や地方自治体は、今日の財政事情の下では喫煙者にたばこをやめてもらっては困るんです。だから国や地方自治体は、喫煙できる場所を減らしたり分煙化の運動を進めたりしていますが、個人に向けて禁止すべきとはいってないはずです。ただ、たばこを吸うと健康に良いとは言えないので、「もっと吸え」とは言えませんよ。まあ、専売公社時代には「今日も元気だ。たばこがうまい」という宣伝文句がありましたけどね。

竹山 喫煙者自身の健康被害のほかに、受動喫煙で他人に迷惑をかける問題もありますからね。しかし、たばこを吸う人はたくさん税金を納めているからありがたいなんて、世の中で誰も思ってないですよね。

「税金が役立っていることは目に見えませんが、煙は見えますから」

森信 喫煙者はいま、そんなに肩身が狭いですか。

竹山 正直、かなり狭いです。分煙を進めるのは当然として、吸ってる人をみんなで責める雰囲気もありますし……。

森信 それこそ毎日1000円、人よりも多く税金を払うという人は、正直国としてみれば“ありがたい”存在でしょう。理解が広まって、「俺は税金をたくさん払ってるんだ」って威張るわけにはいきませんか(笑)。

竹山 そこまでの議論になりませんし、オフィスでバンバン吸いながら「俺は税金を払っているんだ」と言ったらやっぱり「うるさいな」ってなりますよ(苦笑)。そうなると、幸せな一服のためには、分煙に気遣いながら税金を払い続けるということですかね。

森信 財務省が泣いて喜びそうな言葉ですね(笑)。

竹山 いやいや、「たばこの税金がみんなに還元されている」と言ったって目に見えませんけど、煙は見えますから。

※1: 国・地方のたばこ税等の税収は決算額。紙巻たばこの販売数量は日本たばこ協会調べによる販売実績で、全課税数量に占める紙巻たばこ以外の製造たばこの課税数量の割合は、平成25年度の0.1%から令和元年度の21.5%に増加している(国税庁統計年報)。

構成=石井謙一郎

撮影=平松市聖 ©文藝春秋

(「文春オンライン」編集部)