2021年7月、フジテレビ系列の岡山放送社員だった柏田貴一さん(30・仮名)が、パワハラを受けて海に入水自殺するという痛ましい事件が起こった。社員の自殺から2か月以上経った9月29日、岡山放送は、中静敬一郎社長の減俸20%3カ月などの処分を発表した。

 「週刊文春」は、今年8月、自殺の原因にパワハラや過酷な労働環境があったことを、遺族の悲痛な叫びと共に報じていた。岡山放送で何が起きていたのか、自殺の背景には何があったのか。第一報となった「週刊文春」9月2日号の記事を再公開する。(年齢、肩書等は掲載時のまま)。

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 憧れの局に入り、報道記者として地元に貢献したいと夢見たテレビマン。だが、芸人「ハナコ」の番組で上司の“パワハラ”に遭い、苦悩の末に海に身を投げた。社内調査が進まぬ状況に母は「真相を知りたい」と慟哭する。

「中学生の時、お年寄りの荷物を進んで持つ思いやりのある子として地元の市長に表彰されたこともある優しい自慢の息子でした。就職活動では10社ほど受けたのですが、希望通りのテレビ局に就職できて、大喜びしたんです。なのに、こんなことになるなんて……」

 涙ながらにこう語るのは、フジテレビ系列の岡山放送社員だった柏田貴一さん(30・仮名)の母である。

「ガーンッ、パシャーン」

 7月6日午前9時半前、岡山市の新岡山港。小豆島行きのフェリー乗り場近くに轟音が響き渡った。釣客が目を向けると、20メートルほど沖合いに白いアウディが浮かんでいたが、数分で海中へと消えていった。

 目撃者が語る。

「車が沈んだ後、荷物と一緒に男の人も浮き上がってきて、しばらくもがいとった。周囲にいた人が『あんた1人だけなんか!』と必死に声を掛けたんやが……」

 レスキュー隊によって約1時間後に引き上げられたのが柏田さんだった。心臓マッサージが施されたが、ほどなく死亡が確認された。

「警察は事故と自殺の両面で捜査していましたが、事故前にエンジンをふかす音を釣り人が聞いていること、減速しないまま車止めを越えて海に突っ込んでいることなどから自殺と断定しています」(社会部記者)

 岡山放送はOHKの略称で地元では親しまれている。

「フジサンケイグループ代表の日枝久氏は岡山の旧家出身。今もOHKの社外取締役を務めており、フジの系列局の中でも同局は別格の存在です。2007年から8年間、日枝氏の側近の宮内正喜氏が社長を務め、その後、フジ本体の社長に異例の復帰。今は会長に出世している」(民放関係者)


岡山放送

 岡山県出身で学生時代からジャーナリスト志望だった柏田さんは、香川大学卒業後の13年、岡山放送に入社。報道記者として事件や災害などの現場を中心に取材していた。

「柏田は『岡山が好き。報道で地元に貢献していきたい』と常々言っていた。仕事熱心な一方、長渕剛の物まねを披露するなどひょうきんな一面も。先輩や同僚が飲んでいる時、『呼ぼう』と必ず名前が挙がるのが彼でした」(OHK関係者)