「処分はしない」能代イジメ16歳自殺未遂、高校が保護者に伝えた驚きの“言い分”《秋田県知事は「重大事態」認定》 から続く

「報道後、しばらくは加害者生徒のイジメも落ち着いていました。しかし再び嫌がらせ行為を受けた8月26日に洋二郎は意識を失い、学校で倒れました。その夜、家に戻ってリビングのソファーに息子を寝かせていたら、明け方に突然起き上がり窓から外に出ようとしたんです。普段は温厚でおとなしい子が静止を振り切って暴れ出し、『あの時、死ぬべきだったのか……』と言いながら錯乱状態になりました。なんとかなだめましたが、落ち着くまで2時間ほどかかりました」

 秋田県の能代科学技術高校に通う佐藤洋二郎くん(仮名)の母親は、文春オンラインの取材に悲痛な声でそう語った。

 今年2月2日、当時高校1年生だった佐藤くんは自宅のカーテンレールに縄跳びをかけ、首を吊って自殺を図った。同じ学校の3人の女子生徒から半年にわたって執拗なイジメを受け、追い詰められた末の行為だった。佐藤くんの全体重がかかったカーテンレールが折れて体が落下したことで大事には至らなかったが、窓の側には遺書も置かれていた。イジメの詳細や佐藤くんが苦しんだ後遺症については( #1 、 #2 )で詳しく報じた。

 佐藤くんが当時通っていたのは、秋田県立能代西高校の農業科。能代西高校は2021年4月に漫画「SLAM DUNK」に登場する山王工業のモデルになった高校バスケの名門・能代工業高校と統合され、能代科学技術高校として生まれ変わった。佐藤くんは現在、その農業科に在籍している。


能代科学技術高校の校舎 Ⓒ文藝春秋

 クラスの3人の女子生徒を中心とする佐藤くんへのイジメがスタートしたのは、2020年の6月頃。佐藤君は家庭では気丈に振る舞い、両親も異変に気づかなかった。しかし今年1月18日、佐藤くんが学校で意識を失って倒れたことをきっかけにイジメが発覚。母親に倒れた理由を聞かれ「イジメ被害に遭っていた」と打ち明けた。

 イジメの存在を知った母親は学校に連絡して調査を依頼したが、佐藤くんは学校の対応に誠意を感じられず絶望し、2月2日に自殺未遂事件を起こしてしまう。命はとりとめたものの、重度のストレス障害となり、症状は悪化して今年9月には複雑性外傷後ストレス障害(PTSD)という診断も受けた。

通学再開後も嫌がらせは止まらず

 3カ月間にわたって学校を休むことを余儀なくされたが、それでも佐藤くんは勇気を振り絞り、4月末には通学を再開した。

「4月に通学を再開しても加害者の嫌がらせ行為が止まらず、洋二郎が学校で倒れることが何度かありました。私たちと弁護士で『これでは安心して学校に通わせられない』と学校に抗議して、6月に『加害生徒の登校時間を分ける』『加害者生徒は学校内で行動範囲を制限する』などの約束事を学校と作りました。イジメを行った女子生徒と息子を接触させないために、校舎3階にある農業科のクラスに近い階段と廊下を加害者生徒は通行禁止にしたんです。

 ようやく平穏な学校生活を取り戻せるかと思いましたが、加害者生徒の行動範囲を制限する約束もほとんど守られませんでした。そして2学期が始まり、8月26日に女子生徒たちはさらに陰湿な威嚇行為を再開したのです。息子は2学期開始から1カ月の間に3度も学校で倒れています」(佐藤くんの母親)