「40代の優しいお兄さんが行きますよ!」

 おばさんだし、若い男の子に自分の裸を見られるのは抵抗がある。だから、相手の年齢はなるべく高い方がいい。そう思った幸子さんは、ネットで探したお店に直接電話して、自分の条件を伝えることにした。

「できれば年齢が高い人の方がいいんですけど」

「それなら、40代の優しいお兄さんが行きますよ!」

 電話の向こうの男性は、明るい声でそう答えてくれた。

 40代って私には全然「お兄さん」じゃなくて、同世代なんだけどな、心の中で思わずそう突っ込んでいる自分がいた。

 平日の昼間。夫も息子も家にはいない。そんな時間を指定して、幸子さんはこっそりと都心に出かけた。待ち合わせ先にやってきたのは、清潔感のある40代のセラピストだった。彼の案内通りラブホテルに2人で入る。

「まずはお風呂に入ってゆっくり温まってください」と促された。幸子さんにとっては何もかもが初めてのことだ。指示されるまま、1人で服を脱いで風呂に入る。とにかく言われた通りにしよう。幸子さんは馬鹿正直に湯船にずっと浸かっていた。あまりに長時間浸かり過ぎて、徐々に頭がのぼせてクラクラしてくる。それにしてもいつまで風呂に入り続けていればいいのだろう。そう思っていた矢先、長風呂を不審に思ったのか、心配そうなセラピストのかけ声で我に返った。

「あのぉ、大丈夫ですか?」

 いつお風呂から上がればいいのかわからないと幸子さんが訴えると、セラピストは「えっ!」と驚いている。そしてドア越しに「好きなタイミングで上がってもらえればいいんですよ」と困った様子で返事した。

 そういうものなのね。安堵してようやく浴室から解放されると、ベッドに横たわることを促された。全身の揉みほぐしが始まり、いよいよ念願の性感となる。

 しかし、20年間閉ざされた扉はそう簡単に開かれるような生易しいものではなかった。セラピストが持っていたディルドをいざ入れる段になって、膣に激痛が走ったのだ。ディルドとは張形とも呼ばれ、ペニスの形をした大人のおもちゃだ。そのおもちゃが、痛かった。

「これまで20年間開かずの扉だったので、いきなりこじあけようとしてもとにかく痛いんですよ。おもちゃを使ってみましょうと言われて入れてもらったんですが、それでも痛い。最後は、僕の指だけでと言われて、かろうじて指は入ったんですけど、気持ちいいという感覚はなくて、違和感しかない。それでなんかよくわからないうちに、コースの2時間があっという間に終わっちゃったんです」

 不完全燃焼だった幸子さんは、その後セラピストに、ツイッターのDMで相談することにした。高まったときに1人で性欲を解消するにはどうすればいいのだろう。するとセラピストは、やはり、ディルドで慣らし、そこからオーガズムを得る方法を勧めてきた。その中でも一番小さいサイズの「ジュニア」がお勧めだという。ジュニアはディルドの中でも、直径がスリムなものだ。芯がなく柔らかいものもあり、初心者にも扱いやすい。まずはそれから始めて徐々に大きいサイズに拡張し、ステップアップしていけばいいとアドバイスしてくれた。

 どこで買えるのかと聞くとAmazonで買えるという。Amazonでは、お茶とか日用品しか買ったことない。幸子さんは、さっそくディルドを購入し、コンドームを被せて膣内に挿入してみた。最初は痛かったが、何度もやるうちに徐々にその大きさに慣れていった。