セラピストとして日本の男性たちに願うこと

「最後はやっぱり愛だと思うんです。確かに、性感を開発するのに技術は必要だと思います。だけど、そこには相手への愛がないと無理だと思うんです。ここがよいとかこっちはあまりよくないとか、お互いの体を勉強するという姿勢ですね。話し合いってとても大事なんですよ。やっぱり、ちゃんと人間としてしっかりコミュニケーションを取るのが大事だと思います」

 コミュニケーションは人間関係の基本だが、それが特に性的なことに関しては、男女ともにあまりにも欠けているのではとけんさんは感じている。けんさんは、女性たちが快楽に目覚めることに無償の喜びを感じている。しかし彼が理想とするのはその一歩先だという。女風を利用することで女性たちが性的にも成熟し、リアルなパートナーとの関係へ還元される関係が最も望ましいと言うのだ。

「本来は、夫婦関係で満たされるのが一番いいと思うんです。でも現実はそうはなれないから自分たちの仕事があるんですよね。女性がイけないのはパートナーさんのテクが未熟だったり、単にご本人が快感に慣れていなかったり、様々な理由がある。でも性的な感度ってトレーニングで上がるんですよ。

 僕に開発された女性が、イキ癖がつく可能性は高いと思います。そういう意味で、僕は女性の感度を上げるお手伝いはできる。女性たちがイケる身体を手に入れた後、パートナーさんたちと満足のいく関係が築けるという形が一番いいと思っているんですよ」

 なるほど、と思う。これだけ女風が流行る背景の一部にあるのは、女たちのリアルな男たちへの諦めがあるのは紛れもない事実だ。セラピストも資本主義経済の中で需要と供給のバランスの中に身を置いている。

 それでもけんさんは、女性たちが社会にリリースされた後のことに思いを馳せる。そして、女性たちが自分たちから卒業することが理想なのだと考えている。けんさんは女性たちが本気で好きだからこそ、その幸せを心から願っているのではないか、そう感じずにはいられなかった。

 その願いの実現は、日本の男性たちが女性たちとどう向き合うかにかかっている。男たちが、女性たちの欲望を受け止めるちゃんとした受け皿になってほしい。それは数え切れないほどの女性たちの欲望と向き合ってきた「舌の魔術師」が、日本の男性たちに切に願うことなのだった。

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(菅野 久美子)