自動車を維持していれば、何もせずとも金が飛んでいく。定期的な出費のなかでも、負担に感じやすいのが保険料である。

「リスクに対する備え」を提供する任意保険だが、安心の範囲を広げようとすれば、もちろん保険料も上がってしまう。かと言って、補償範囲を狭めてしまえば、いざという時に望む補償が受けられないかもしれない。

 なかでも絶対に避けたいのは、「事故に遭ってから保険が適用できないことを知る」という事態である。後悔のない選択をするには、そのプランや特約が「何をどこまでカバーしてくれるのか」をしっかり理解しておくことが大切だ。

 今回はとくに「自分の車に対する補償」に話を絞り、損害保険会社の営業スタッフや、サービスセンター(SC)のスタッフから、「補償の範囲が勘違いされやすいケース」について話を聞いた。


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保険金がゼロになったシカによる全損事故

 保険のプランを選択する際、悩みの種となるのが「車両保険」である。さまざまなケースで自車の修理費用をカバーしてくれるが、そのぶん保険料への影響も大きい。さらに、補償範囲もプランによって異なり、条件をしっかりチェックしておかないと、後で泣きを見ることにもなりかねない。

 Aさんは旅行中、夜景スポットから宿へと向かう山道を下っていた。街灯もない暗闇のなか、突然目の前に大きな黒い影が。避けきれず、「ドーン」という衝撃とともに、「ピャァーッ」と甲高い鳴き声が車外に響いた。シカにぶつかったのだ

 シカは何事もなかったかのように立ち上がり、その場を去って行った。一方、Aさんの車はフロントを大きく損傷し、自走が困難な状態に。加入している損保会社のレッカーサービスを利用し、修理工場で出された見積もりは50万円を超えた。

 Aさんは車両保険に加入していたので、これを使おうとするが、損保会社から「契約しているプランでは動物との衝突は補償対象にはならない」と告げられてしまう。結果、すべて自腹での修理を余儀なくされた。

「動物との衝突事故は、保険契約上『単独事故』と同様に扱われます。Aさんの車両保険は、単独事故をカバーしない『エコノミー型』だったため、補償の対象にはなりませんでした」(SCスタッフ)

 車両保険は大きく「一般型」と「エコノミー型」に区分され、共通する補償範囲としては対車両の事故や盗難、台風や火災、飛来物・落下物による被害などが挙げられる。これらに加えて、一般型では単独事故や当て逃げなども補償範囲となるが、範囲を限定したエコノミー型ではカバーされない。

 実際のところ、「エコノミー型の車両保険は単独事故に適用されない」という条件を見て、「動物との接触」のリスクにまで気が回る者はそう多くないように思われる。しかし地域によっては、シカをはじめとする動物との衝突事故は珍しいことではない。