大きな箱を抱えた少年がいる。箱の中にはなにやらいろいろと入っている。サッカーボールなどもあるが、たいていは名前のわからない謎の物体。不思議な幾何学模様や極彩色のものに妙に古びたもの、大人が眉をしかめるような生々しいものや禍々しいものも入っている。


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 その年頃の子供が興味をもちそうもない代物ばかりだが、彼は表情を変えずにひとつひとつについて淡々と説明する。どうやらこれらは「人間の欲望」のようだ。その世界観や感性が独特すぎて、どう反応していいのか迷う。そんな印象がある。斎藤工の話だ。

 現在公開中の『シン・ウルトラマン』を観た。適役としか言いようがない。謎に満ちた生命体、人間ではない何か、不思議な能力をもつ者として、彼以上に説得力をもたせることができる俳優がいるだろうか。ここ数年、現世や地上から離れまくって跳躍している斎藤工の来し方を部分的に振り返ってみる。

悪だくみから奥様御用達へ

『チェイス〜国税査察官〜』(2010年・NHK)では資産家の息子で、巨額の脱税&遺産総取りを目論むも、腹違いの兄に人生を翻弄される役。美しくて悪くて、でもちょっとあさはかで脆い。最後は物悲しい結末を迎える青年を好演。井浦新(当時はARATA)の妖艶さが浮世離れしていた分、工は「業と情」に徹する弱くて脆い立ち位置だ。悪い工=悪だくみシリーズの幕開けだった。

 クズ兄と言えば『カラマーゾフの兄弟』(2013年・フジ)。強欲で俗悪な資産家(吉田鋼太郎)の長男役で、遊びほうけては儲け話に食いつき、借金まみれという“平成のクズニーニー”だった。ただ、この作品は声量ハンパねえ鋼太郎に加え、優秀な次男役が市原隼人、殺された父の事件を執拗に調べる刑事役が滝藤賢一と、強烈な印象を残すメンバーに囲まれていたため、残像は薄かった。

 ただし、目ざとい女性たちは悪だくみのポテンシャルを見逃さなかった。彼がもつミステリアスな色気は「ワケありの恋愛モノ」に有益だ、と。特に大御所の女性脚本家たちの作品で、悪だくみがエロだくみに転化した感もある。

『ガラスの家』(2013年・NHK・大石静脚本)では官僚の父(藤本隆宏)の後妻(井川遥)に思いを寄せる長男役。下世話な言い方で言えば「親子丼」ね。