しかし、伊沢容疑者は異常性をA子さんの父親にぶつけるようになっていった。

「A子が実家に帰ってくるたびに、伊沢が俺にSMSを送ってくるようになったんです。《監禁してんじゃねえか》とかね。だから、A子が実家から伊沢の家に行こうとするときに『もう行くな』と腕を掴んで止めたんです。あんな奴のもとに行かせるわけにはいきませんから。A子がパニックになって悲鳴をあげて、警察に通報した。すると警察が来た頃に伊沢がA子に『殺人未遂と傷害で親父を捕まえろ』と電話をかけてきたんです。その日はA子が伊沢の家に帰りたいと言ってきかないので、うちまで伊沢が迎えに来て帰っていきました」

 伊沢容疑者は、自宅に帰ってきたA子さんに優しくこう声をかけたという。

「かわいそうだったね、良かったね、帰ってこれて」

異常な言動「カーテンを開けるな! 換気口は粘土でふさげ!」

 しかし、それでもDVが止む気配はなかった。そして、伊沢容疑者の言動はさらに異常をきたしていく。

「10月中旬頃だったと思います。一日中窓もカーテンも締め切るようになったんです。ちょっとでも隙間が空いていたら『閉めろ!』と怒鳴られました。なんで閉めきるのか聞いたら『〇〇さんと〇〇さんが見てるから』って。それまでは、仕事に行くときには網戸にして換気していたのですが……。

 12月には『穴という穴は全部塞げ』と言われ、換気口に粘土を練って詰めさせられたこともあります。他にも『Googleには全部知られてる』とかわけのわからないことを言っていました」

 こうした異常行動が目立つようになった時期、伊沢容疑者は「弁当を買いに行ってくる」と30分ほどフラッと外出することが増えたという。そして、伊沢容疑者は買いに行ったはずの弁当を持たずに帰宅するのだ。

「そういうときは決まって様子がおかしくなっていました。急に立ち上がって45度以上の熱いお風呂に服を着たまま入ったり、電気が消えたトイレにこもって『あー、あー、あー』と呻いていたり。奇怪な行動が増えていきました」

 伊沢容疑者の異常な行動で、A子さんも変調をきたす。

「去年の12月19日、私の精神状態が完全におかしくなっていて、衝動的にハルシオンを200錠飲んだんです。意識をなくして失禁して、伊沢先生に怒られました。翌20日、これまで何度も浮気を疑われて携帯を壊されていたので、伊沢先生はどうなのかと思って彼の携帯を見たんです。すると他の女性と連絡をしていた。

 なんで浮気をしていない私だけがこんなに怒鳴られて暴力も振るわれなくちゃいけないの。何もかも終わりだと思って、溜めていたラボナ120錠と、イソミタール10袋ぐらいを伊沢の目の前で飲みました。ラボナは30錠でも死ぬことがある強い薬ですが、伊沢先生は私が薬を飲むのを止めることはありませんでした」

 ラボナとイソミタールはいずれもバルビツール酸系に分類される薬だ。古くから存在し、芥川龍之介が自殺する際に利用されたことでも知られている。過剰に摂取すると生死に関わるため、処方について批判的な意見も多い。

 A子さんが意識朦朧とするなか、伊沢容疑者は衝撃的な行動をとったという。