もしあなたが人生の最期を迎えるとき、どんな風に過ごしたいと思うだろうか。もしあなたの“大切な人”が人生の最期を迎えるときは、どんな風に過ごしてもらいたいと考えるだろう——。

 ここでは、終末期の患者の願いをかなえる付き添い看護サービス「かなえるナース」を運営する前田和哉氏の著書『 自分らしい最期を生きた人の9つの物語 』(KADOKAWA)から一部を抜粋。死期が迫っている父のために結婚式をあげた、篠田さん一家の“親子の絆”を紹介する。(全2回の1回目/ 2回目に続く )


写真はイメージです ©iStock.com

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病室でパジャマ姿の父が、娘の結婚式でハレの日の装いに

 教会の扉の前で、花嫁の登場を心待ちにしていたのは、新婦の父・篠田さん。そこに、純白のウエディングドレスを身にまとった、娘のみきさんが現れました。ぱっと花咲くような満面の笑みで父のもとに駆け寄っていきます。

 娘の初めて見る晴れ姿に、篠田さんはハッと息を呑み、車椅子から見上げています。その手には、最愛の妻であり、みきさんの母の遺影を抱いて。

 夏の足音が間近に感じられる7月上旬。

 篠田さんの娘さんの結婚式が行われました。オープニングは、父と亡き母、娘による“ファーストミート”の時間です。

「わぁ、お父さん、見違えたね! スーツも髪型もとっても似合ってる。今日は来てくれて本当にありがとう」

 いつもは病室でパジャマ姿の父が、ビシッとハレの日の装いになり、驚きと感動が入り混じるみきさん。

 思わずしゃがみこんで、父の両手を握りしめました。

 篠田さんは、みきさんの声に「うん、うん」とうなずき、口角をキュッと上げて、うれしさが込み上げているようです。

 まもなく式が始まり、新婦の入場です。みきさんのお兄さんが父の車椅子を押すために後ろでスタンバイ。ずっと待ち望んでいた、父と娘でバージンロードを歩く瞬間がもうすぐ訪れようとしていました。