「アパートで男女が争っていた」という情報

 自宅周辺の取材では、A子さんの行方がわからなくなる2〜3日前の深夜に、彼女が住むアパートの入口や通路で男女が争っていたとの情報が出てきた。男が「恐れるものがないくらい好きだ」や「お前を殺すこともできる」との言葉を発しているのを、近所の住人が聞いていたのだ。また、6日の午前2時過ぎには、A子さんの住むアパートの2階から、足元がふらふらになった女性(※誰であるかは不明)を男が連れ出して、路上に停めた車に乗せた姿も目撃されている。

 このように、事件に繋がるのかどうかはっきりしない、未確定な情報が溢れていた。さらに、前出のA子さんの会社の同僚は、彼女の交遊関係について次のように語る。

「以前、A子さんと飲んだときに、社内で年上の男性と交際し、相手の転勤を機に向こうから別れを切り出されたと彼女から聞いたことがあります。A子さんは相手を『先輩』と呼んでいて、別れてしばらく経っていたはずですが、いまだに好きで好きでたまらないといった感じでした。また、別れたときには社内で人目もはばからずに泣いている姿が目撃されています」

 職場でのA子さんは「頼れる姉御」といったタイプで、年上からは可愛がられ、年下からは慕われる「理想の営業ウーマン」だった。同僚は振り返る。

「製薬会社と薬局や病院との間を取り持つ仕事をしていたA子さんは、いつも黒っぽい上下のパンツスーツを着て、お酒の席でも決してゆるくなることはないし、全然、オンナを売りにしたりしないタイプでした」

 仕事熱心で真面目なうえに、慎重な性格であることから、見知らぬ相手を部屋に入れることは、絶対に考えられないとのことだった。この同僚は続ける。

「それこそ、たとえ同じ会社の仕事仲間であっても、相手が男性であれば部屋に上げるどころか、玄関に入れることすら考えられません。ましてやそれが深夜だったとするなら、特別に親しい相手だったか、無理やり押し入られるとか以外ではありえない」

交際相手はシロ

 こうした発言にある通り、福岡県警はかなり早い段階からA子さんの交遊関係を中心に、過去の交際相手への事情聴取を行っている。その結果、交遊関係での犯行ではない、との結論に達していたようだ。当時、取材していた福岡県警担当・Y記者は言う。

「じつはA子さんの過去の交際相手については、捜査本部にも『動向がおかしい』との通報があったそうで、アリバイを含めて徹底的に調べています。しかしその結果、シロとの判定だった。だから交遊関係については、捜査線上から完全に消えたと見ていい」

 ではいったい、彼女のまわりでなにが起きていたというのか。そこで持ち上がったのが、事件の4カ月前である09年11月に発生した、交通事故にまつわるトラブルである。

〈福岡OL死体遺棄事件〉被害者宅で密かに発見されていた猟奇的な“あるもの”とは へ続く

(小野 一光)