日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関から、官僚の人事情報をいち早くお届けする名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2022年10月号より一部を公開します。

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防衛費問題は「財務系官僚vs.保守派政治家」

 年末の予算編成にむけて、財務省の動きが慌ただしくなってきた。なかでも注目は防衛費をめぐる自民党議員との交渉である。

「国内総生産(GDP)比2%」を突きつけられた財務省は、6月の幹部人事から参院選と内閣改造を見据えたシフトを敷いてきた。

 主計局長に就いた新川浩嗣氏(昭和62年、旧大蔵省入省)は、2%論の先頭に立ってきた安倍晋三元首相の秘書官。新川氏の下で防衛予算を直接、担当することとなる寺岡光博主計局次長(平成3年)は菅義偉前首相の秘書官だ。財務省としては、この布陣で「安倍・菅」の旧官邸一強コンビを攻略する狙いがあった。

 ところが安倍氏は参院選の投開票日直前に不慮の死をとげる。最終的に安倍氏への根回しで保守派を抑え込み、軟着陸させようとの思惑は早くも崩れてしまった。

 安倍氏なき自民党との折衝で難敵とみられるのは、「安倍氏の思いを受け継ぐ」と公言する萩生田光一政調会長と高市早苗経済安全保障担当大臣。萩生田、高市両氏とも旧統一教会との関係で矢面に立っており、それだけに勝負所となる防衛費では譲れない。萩生田氏は就任直後の会見の冒頭からいきなり「防衛力の強化」を訴えた。


萩生田光一氏 ©文藝春秋

 高市氏については、地元選挙区の奈良つながりで、茶谷栄治事務次官(昭和61年)の役割が重要になる。奈良県随一の進学校東大寺学園出身の茶谷氏に、高市氏は親近感を抱いているからだ。

 財務省は、首相官邸にいる宇波弘貴首相秘書官(平成元年)に加え、財政再建論者だった与謝野馨氏の秘書官を長く務めた嶋田隆政務秘書官(昭和57年、旧通産省)も味方に数える。安倍氏不在の中、防衛費問題は「財務系官僚vs.保守派政治家」の様相が色濃くなってきた。

 事態を収拾するには、やはり岸田文雄首相本人が動くしかあるまい。