今回のドラマや書籍のタイトルには、「ファーストペンギン」という言葉が使われている。ファーストペンギンとは、集団で行動するペンギンのうち、最初に氷上の群れを飛び出て海水へ飛び込む一羽のこと。転じて、ベンチャー精神ある者のことを指すが、自身がファーストペンギンである自覚のほどは?

実績ゼロ・顧客ゼロ・反応ゼロのスタートでしたけれど…

坪内 たしかに私たちは実績ゼロ・顧客ゼロ・反応ゼロの状態から、思い切ってピョンと大海原へ飛び込んだので、ファーストペンギンだったとは言えるでしょうね。

 でも、私たちが特に勇敢だったとか、先見の明があったというわけでもないと思いますよ。流氷の上でたまたま崖っぷちに立っていて、何かの弾みで背中を押されて思いがけず飛んでしまったというのが、実際のところ。

 海に飛び込んでみたら意外にうまくいって、運よく注目してもらえたというだけじゃないですかね。

 飄々と大胆なことができてしまうのは、生まれついての性向ということになるだろうか。

坪内 それはあります、自分で決めたことは脇目もふらず突き進むので。それともうひとつ思い当たるのは、私の死生観が関係していますね。というのも私はいつも、頭のどこかで死を意識しているところがあるんですよ。これは以前に病気をしたときの経験がもとになっているんですけどね。

大病院で悪性リンパ腫の疑いと診断されたことが転機だった

 大学生のあるとき、突然高熱が出てずっと下がらなくなってしまったんです。あちこちで診てもらっても、ちっともよくならないし、原因もわからない。行き着いた大きい病院で、悪性リンパ腫の疑いがあると診断され、もしそうなら余命半年だと言われました。

 その後の確定診断で、感染症の一種と診断され、ようやく光明が差したんですけど、精神的にはもう以前の自分には戻れませんでした。悪性リンパ腫で余命短いと言い渡されたときの、虚しさと恐怖が頭にこびりついて離れなく成ってしまったんですよ。

 そのときから、明日死んだとしても後悔ないよう生きたいという強い思いが、自分の芯のところに芽生えて育っていった。以来、日々巻き起こる出来事には、ほとんど動じなくなったんですよね。

 人はいつか死ぬのだから、いろんな人と笑顔で生きていければそれだけで充分に幸せ。世事の浮き沈みなんて、まあいつも前向きに捉えて、乗り越えていけばいいだけじゃないかという考えが、すっかり心に住み着いてしまいました。

「学歴がない」「地方から動けない」「泥臭い」第一次産業が持たれがちなイメージを変革する美人社長…狙うは新たな“家族経営”≪ドラマ「ファーストペンギン!」モデル・原作者≫ へ続く

(山内 宏泰)