「誰なら選挙を勝てるのか」 石破茂に足りないもの

 政権を作るとき、必ずそこには“大義名分”が必要になります。「何のために総理大臣になるのか」そして選ぶ側は「どういう理屈でこの人を選ぶのか」。

「総理大臣は時代が求める」とも言われますが、たとえば田中角栄(1972年〜74年)のあとに、三木武夫(74年〜76年)が首相になった。それは「クリーン三木」といって『金権で政権が倒れたから、ここはクリーンな三木がいい』ということで指名されたわけです。

 あるいは失敗した例ですが、竹下登(87年〜89年)のあとの宇野宗佑(89年)。このときはリクルート事件で“ポスト竹下”が総崩れした。竹下は「政策の継続性」を打ち出し、翌月に控えたサミットを見越して、外交政策を引き継ぐ宇野外相を指名するのです(女性問題が出たため、69日で宇野政権は終わってしまいますが)。

 “大義名分”で考えると石破氏は「安倍路線の転換」を軸に政策を構想できるでしょう。反対に石破氏に足りないのは総裁選というインナー選挙での人気です。12年、18年の総裁選でも党員票ではよい勝負をするのに、国会議員票が集まらなかった。

「誰なら選挙を勝てるのか」という自民党議員の思惑に応えることができれば、角栄からの“転換”を図った三木のように総裁の座を射止める可能性があるのではないか。

 今月の『文藝春秋』で石破氏は二階俊博幹事長、菅義偉官房長官、竹下亘氏の名前を具体的に出しています。石破氏の頭の中で「二階氏を軸に総裁選へ向けて動くのであれば……」という枠組みを示したものでしょう。じっさいに石破派のパーティの講師を二階氏にお願いしに行き、二階氏が受諾したこともニュースになりました。

 石破氏の強みをひとつ挙げるとすると、石破派は議員19名と小さいながらも優秀な保守の政治家がいる。斎藤健元農水相、田村憲久元厚労相、鴨下一郎氏……。鴨下氏は医師免許を持っていますからコロナ問題でもしばしばテレビで発言していました。側近の優秀さでいえば石破派でしょう。

 現状の数の論理から考えると「ポスト安倍」は石破vs.岸田というのが最も順当なところです。しかし戦をするうえで、それぞれに大きな弱点を抱えていることは否めません。「選挙に勝てる顔」、これならイケるという人が出てくると、一気にそちらに流れる可能性もあります。

 “3密はダメ”という「リモート政局」で、間接的にどうやって多数派工作をするのか。コロナ対策で評価を上げた吉村知事のようにメディア戦略に成功する政治家が前に出てくることになるでしょう。

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(後藤 謙次)