今はただ、春の訪れを待つのみなのだ

 考えられる要因はいくつもある。あの頃の主力選手はみんな若かった。ほとんどが20代で粗削りだけれども、才能に満ちあふれ、勢いづかせたらとどまることを知らない爆発力があった。以下に紹介するのは、92年第1戦のスターティングオーダーだ。

1.飯田哲也(中)……6年目24歳
2.荒井幸雄(左)……7年目28歳
3.古田敦也(捕)……3年目27歳
4.ハウエル(三)……1年目31歳
5.広沢克己(一)……8年目30歳
6.池山隆寛(遊)……9年目27歳
7.秦真司(右)……8年目30歳
8.笘篠賢治(二)……4年目26歳
9.岡林洋一(投)……2年目24歳

 最高齢がハウエルの31歳で、広沢、秦が30歳。それ以外はみんな20代なのだ。ちなみに、以下に紹介するのが2020年の開幕戦のスタメンオーダーだ。

1.坂口智隆(一)……18年目36歳
2.山田哲人(二)……10年目28歳
3.青木宣親(左)……11年目38歳
4.村上宗隆(三)……3年目20歳
5.塩見泰隆(中)……3年目27歳
6.雄平(右)……18年目36歳
7.エスコバー(遊)……1年目34歳
8.嶋基宏(捕)……14年目36歳
9.石川雅規(投)……19年目40歳

 20代選手は山田、村上、塩見の3人。40歳の石川、38歳の青木、36歳の坂口、雄平、嶋、そして34歳のエスコバー。ベテランの起用が悪いと言っているわけではない。しかし、あまりにも「ベテラン偏重」すぎるスタメンは、長いペナントレースを戦うには、あまりにも不安定要素が大きすぎる。

 ベテランを脅かすような若手の不在が改めて浮き彫りになってくる。それを改善するためには、ドラフト戦略や若手育成システムの見直しが必要となってくるのかもしれない。「ドラフト」と言えば、野村監督就任前後のヤクルトのドラフトは神がかっていたことも見逃せない。92年、93年日本シリーズに出場した選手を中心に列挙してみる。

1988(昭和63)年……1位・川崎憲次郎、3位・笘篠賢治
1989(平成元)年……1位・西村龍次、2位・古田敦也
1990(平成2)年……1位・岡林洋一、3位・高津臣吾
1991(平成3)年……1位・石井一久
1992(平成4)年……1位・伊藤智仁、3位・真中満
1993(平成5)年……1位・山部太

 川崎、西村、岡林、石井一、伊藤智、山部……、この6年間のドラフト1位の顔ぶれを見ているだけで恍惚としてくるではないか。即戦力投手と大学、社会人野手のバランスの良さ。そして、何というくじ運! 故障のために全員が一堂に会することはなかったけれど、毎年毎年、これだけの有望投手が入団していれば、当然チームは強くなる。

『詰むや、詰まざるや』を執筆しながら、当時のヤクルトと2020年ヤクルトの彼我の差に思いを馳せる日々が続いた。主力選手の若返り、そしてドラフト上位選手の成長は、すぐに結果が出る問題ではない。少なくとも3年、いや5年先を見据えた長期的展望が必要になるだろう。

 それは、単純に首脳陣を入れ替えたり、トレードで他球団選手を獲得したり、外国人選手を補強したりといった、短期的方策でどうにかなる問題ではないだろう。数年先を見据えたグランドデザインを描くことのできる聡明な実力者がはたして、球団にはいるのだろうか? 

 何も手を打たなければ、現状は悪化するだけだ。手をこまねいている場合ではない。山田哲人、小川泰弘、石山泰稚の残留が決まってひと安心はした。しかし、「全員残留」とはすなわち「2020年の現状維持」でしかないのも事実だ。例年にない積極的な補強もしている。今はただ、春の訪れを待つしかないのか? いや、冬来たりなば、燕の春は2021年。こう信じて、今年の開幕を待ちたい。

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(長谷川 晶一)