やっぱり期待しかない。大きな体躯、フルスイング、愛嬌のあるキャラクター……どこを切り取ってもやっぱり期待してしまう選手。今年こそ1軍デビューが待ち遠しい、リチャード選手だ。

 ここまでウエスタン・リーグトップの5本塁打、15打点をマーク(4月19日現在)。京セラドーム大阪で行われた4月6、7日の2軍バファローズ戦では2試合連続本塁打を放った。7日の本塁打は5階席に飛び込む特大アーチ。「昨日以上の飛距離が出ました」と実況され、ネット上でも話題となったが本人は「実は1日目の方が飛んだんですよ。カメラ追えてなかったですけど『YKK AP』の看板のとこまで飛びました。2日目は『総合メンテナンス』のところでした(笑)」と振り返ってくれた。打球の行方をしっかり見届けられていることからも、完璧な当たりだったことが伝わってくる。更に10、11日のタマスタ筑後でのカープ戦でも再びの連続本塁打。やはり信じられないパワーの持ち主だ。

 4月になって状態を上げてきたリチャード選手を見ていると、今年こそと1軍デビューを心待ちにする思いも前のめりになる。藤本博史2軍監督は「今、1軍に推薦できる。本当に良い状態」と太鼓判を押していた。3軍監督時代からリチャード選手を厳しい愛のムチで指導してきた藤本監督が言うのだから、より一層期待感が募る。


©上杉あずさ

好調の要因は「集中力」

 リチャード選手自身に好調の要因を取材してみると、思わぬ答えが返ってきた。

「好調の要因は……集中力です」

 え、集中力? もっと技術的な変化や取り組みがあるのでは?

 そう思ってしまった私は、すかさず「ボールの待ち方とかバットの出し方とかフォームで意識していることはありますか?」と踏み込んでみたが、「いや〜ないですね。ほんと集中、それだけです」とリチャード選手。

 藤本監督、大道典良2軍打撃コーチに尋ねてみても答えはリチャード選手と同じく「集中力」だった。元々、集中力が高い方ではないリチャード選手だが、今はそれが克服できつつあるようだ。つまり、ここぞの集中力を極めさえすれば、持ち前のパワーが遺憾なく発揮されるということだ。長谷川勇也選手のような凄まじい集中力を手にした暁には、\リチャード優勝/という圧倒的な未来が待っているのではなかろうか。何だか急に末恐ろしくなってきた。

 この課題はシンプルにも映るが、プロの舞台では決して簡単なことではないに違いない。気持ちに起伏があったり、アピールしてやろうと意気込んだり、選手一人ひとりの頭の中にそれぞれのストーリーがあるからこそ単純ではないはずだ。でも、それらを取っ払って一打席一打席の戦いに集中する。自分自身との戦いでもあるだろう。「集中力」という話からいろんなことを考えてみたが、当の本人は「ランナーがいる時、同点の場面、怒られた後は特に集中力が増しますね(笑)」と愛おしい言葉が返ってきた。でも、確かに今季放った5本中4本が、ランナーがいる場面での本塁打だった。リーグトップの打点を稼いでいることからも勝負強さ、集中力高く挑めていることが感じられる。

 この状態で是非、1軍デビューを飾って欲しい。ランナーがいる同点の場面で、誰かに怒られてから打席に向かって欲しい。初打席初球本塁打で鮮烈なデビューを飾ってくれたら最高じゃないか!(オスカー・コラスか!)

 そんなリチャード選手の入団から今までを振り返ってみよう。沖縄尚学高から2017年育成ドラフト3位でホークスに入団。1、2年目は3軍メイン。練習中、どっちが遠くに飛ばせるかとコラスと本塁打競争していた姿が懐かしい。2年目オフのウインターリーグで結果を残すと、翌春季キャンプで育成ながら初のA組に抜てき。王貞治球団会長にも見初められ、熱血指導を受けた。ちょっとマイペースな所もあるリチャード選手だが、日本一球団の先輩たちとの過酷な練習にヘトヘトになりながら必死に食らいついていった。そして、その年の3月。念願の支配下登録を勝ち取ったのだった。