金メダルの大本命であった桃田賢斗、そして、世界ランキング1位の女子ダブルス福島由紀選手・廣田彩花選手ペアがまさかの予選敗退。しかし、混合ダブルスでは銅メダルを獲得するなど、日本のバドミントンは確実に力をつけ続けていることは事実だ。はたして、これまで日本のバドミントンはどのように躍進してきたのか。ここ数年の活躍の背景にはある一人のコーチの存在があるという。

 そう語るのは、バドミントン元日本代表でロンドンオリンピック銀メダリストの藤井瑞希氏。ここでは同氏の著書『 日本のバドミントンはなぜ強くなったのか? 』(光文社新書)の一部を抜粋。日本バドミントンの常識を変えた一人のコーチの実像に迫る。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

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世界のバドミントン大国と言えば……

 野球と言えばアメリカが大国で、サッカーならブラジルやドイツが世界を牽けん引いんする存在でしょうか。ラグビーでもバレーボールでも、陸上や水泳でも、国際大会でつねに上位に名を連ねる国はあるものです。


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 それでは、バドミントン大国は?

 私がまず思い浮かべるのは中国です。2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、5種目のうち2つで金メダルを獲得しました。2012年のロンドンオリンピックでは金が5つ、銀が2つ、銅が1つだったので、近年は以前ほど飛び抜けた強さを発揮できているとは言えません。それでも、大国としてまず名前があがるのは中国で間違いないでしょう。

 プレイの特徴には、スピードとパワーがあげられます。シングルスとダブルスで違いはありますが、スピードで相手を上回り、パワーでねじ伏せるのが中国の基本的なスタイルです。

 ゲームの運び方としては、ディフェンシブよりオフェンシブのスタイルが多く、長いラリーは好みません。バン、バン、バン、と決めにくる選手が多い。攻撃型と呼ばれるスタイルです。

 現役当時、私は中国ペアとの対戦では長期戦に持っていくゲームプランを描いていました。攻撃型に対してラリー型と呼ばれるスタイルです。ところが、4本に1本ぐらいしか持っていけません。相手はスピードとパワーがあるので、長い打ち合いへ持ち込めずに短いラリーで決められてしまうことがありました。

 かつては大型選手が多いのが中国チームの特徴でした。長身でなければ中国代表には入れない、という話を聞いたこともあります。このところは170センチ台の選手もいて、体格差を感じさせるようなことはなくなりました。その理由までは分かりませんが……。

 東京オリンピックへ向けては、驚きの決断を下しました。

 韓国人のコーチを迎えたのです。自国以外の指導者が加わるのは初めてのはずで、「あの中国が他国に頼るとは……」と、バドミントン界には衝撃が走りました。

 東京オリンピックでの復権を目指す、中国の意気込みが分かるというものです。