「まずは競技関連で大きな事故なく終えられてホッとしました」

 競技団体から東京五輪組織委員会職員として派遣されて運営に関わり、五輪を終えたばかりの男性はその気持ちを語った。東京五輪組織委員会の職員は7000人以上いて、東京都、国、自治体、民間企業の他、各競技団体などから出向している。

 2021年7月23日。近代オリンピック史上初の1年延期となった東京2020は、新型コロナウイルス感染拡大への不安を抱える国民の間で開催反対の声が収まらない中、政府や東京都による「安心・安全」という約束のもと決行された。その約束は本当に守られたのか。五輪競技会場の現場で、その実態を間近で見てきた元組織委職員は、まず、あまり報道されていない会場内の問題について触れた。


札幌ドームの周りには子供が書いたと思われるメッセージ付きの朝顔があった ©JMPA

「車両事故が多かったんですよ」

 8月26日、パラリンピック選手村で柔道の日本代表選手が自動運転中の巡回バスに接触し、出場を断念するという大変残念なニュースがあった。トヨタ自動車の豊田章男社長は「パラリンピックという特殊環境の中で、目が見えない方がおられる、体の不自由な方がおられる、そこまでの環境に対応できなかった」と謝罪をした。

「パラ選手村で接触事故を起こしたのはe-Palette(イーパレット)という自動運転車です。しかし、パラだけではなくオリンピック開催中も、APMという大型のゴルフカートのような、各部署の人員、物資輸送をするトヨタの電気自動車の巻き込み車両損傷が十数件ありました」

 車両事故については、公道においても東京五輪が開かれた17日間に、大会関係車両が絡む交通事故が東京都内で111件起きていたことが警視庁のまとめでわかっている。会場内外とも大事故にはつながらなかったというが、抱えていた不安材料はそれだけではない。現場での最大の懸念のひとつが「穴だらけのバブル」だった。