昨年度の将棋界を「観る将」の視点で振り返る「観る将アワード」も、今回で3度目の開催となった。2021年度は「名局賞」「最優秀棋士賞」「最優秀女流棋士賞」「最優秀解説者賞」「最優秀聞き手賞」「ベストエッセイスト賞」「ベスト棋譜コメント賞」に新たに「ベストYouTuber賞」部門を加えた8つの部門に、100名近いファンの方々からご投票をいただいた。

 この投票を参考に、今年も審査員を務める深浦康市九段と遠山雄亮六段に各賞を決めていただいた。会場は、読む将の聖地「ジュンク堂書店池袋本店」。昨年はオンラインのみの配信だったが、今年は、会場にもファンの方がお越しくださり、楽しいイベントとなった。

 では、さっそく「名局賞」の選考の様子からお届けしよう。


すっかりおなじみの審査員、深浦康市九段(左)と遠山雄亮六段 ©石川啓次/文藝春秋

名局賞 名局の絶対条件は、際どい終盤

――まず、名局賞のアンケート結果は、票数の多い順からこのようになりました。

1位 竜王戦第4局 豊島将之竜王/藤井聡太三冠
2位 棋聖戦第3局 藤井聡太棋聖/渡辺明名人
3位 棋王戦挑戦者決定トーナメント 佐藤康光九段/郷田真隆九段

――アンケート投票の結果、1位は竜王戦の第4局でした。2位にかなり得票差をつけて大きな支持を集めましたが、この要因はどういったところにあると思われますか。

深浦 まず、今回も多くの方に投票いただきありがとうございました。さて、この竜王戦の第4局ですが、自分はNHKの「激闘!将棋竜王戦ダイジェスト」という番組で解説を担当しており力が入りましたね。みなさんに、いかに藤井さんと豊島さんの考えを伝えようかと必死でした。

――決してわかりやすい将棋ではない?

深浦 盤面に現れたところもすごいんですが、水面下に読みが凝縮されているんですよね。それを探り伝えるのが大変でした。

――遠山先生は、この対局はどう見ましたか?

遠山 最終盤で、豊島さんが大長考するんです(編集注・99分)。終盤戦って、30分くらい考えれば、勝ちも負けもわかることがほとんどなんです。でも豊島さんが90分以上考えてもわからなかった。その複雑さはすごいですよね。

 このアンケートのなかで、終盤、豊島さんが「時間攻め」をしなかったことに触れている方がおられてツウだなと思いました。たしか藤井さんが残り10分くらいで、豊島さんがパッと指せば、秒読みのなかで藤井さんもまちがえたかもしれない。でも豊島さんはそれをせず、とことん読んでやろうとしたところから、この名局が生まれたのかもしれません。

――今、遠山先生がふれられた「時間攻め」に関するコメント、ご紹介しますね。

 終盤、豊島竜王の方が時間的には絶対有利で、とても難解だった局面。豊島竜王には“時間攻め”という戦法もあったと思うのですが、ご自身が納得できるまで時間を使い考えぬかれました。結果は正解手を見つけられず負けとなりましたが、大変難しい局面を前にして豊島竜王も藤井三冠も“考えている時間がとても楽しかった”、“あの時間がとても幸せだった”、“終わった後もあの局面のことをずっと考えていた”、“(勝ち負けは抜きにして)最善手を指して、もっと先まで指し続けてみたかった”と……。

 最終的には藤井三冠のストレート勝ちで終わってしまいましたが、特に第1局・第2局は豊島竜王が勝っていてもおかしくなかった内容で、熱戦続きの見応えがあるタイトル戦でした。(60歳/女性)