「力士は四股名を呼び上げられることで『良い相撲を取って頑張ろう』って気合を入れるんです。でも彼の場合、『呼び上げ』じゃなくて『呼び下げ』なんです」

 開催中の大相撲九州場所。結びの一番を見て、かつて呼出の最高位・立呼出(たてよびだし)を務めた人物は嘆くのだった。

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人柄は真面目だが、大人しすぎて頼りない印象も

 大相撲の本土俵の中心で扇子を広げ、おもむろに「にぃ〜しぃ〜」と東西の力士の名を呼び上げるのが呼出だ。

「最高位である立呼出は、言うなれば呼出界の『横綱』です。日本相撲協会はこのほど、現在三役格で63歳の次郎(呼出名)を来年初場所で2階級昇進させて、立呼出とすることを決めました」(運動部記者)

 次郎の人柄について、角界関係者は語る。

「呼出は、太鼓叩きなど裏方の仕事が多くありますが、次郎は特に土俵づくりの名人。人柄は真面目ですが、大人しすぎて頼りない印象も。元々『呼出ファン』だった奥さんに猛アタックされて結婚したそうです」

本人も呼び上げが苦手なことは気にしていた

 ところがある好角家はこんな評判を口にする。

「次郎はね、残念ながら音痴すぎるんですよ」

 荘厳な声が土俵に響けば観衆の喧騒は自ずと静まり、拍手が沸き上がるものだ。だが九州場所中のある日の次郎の呼び上げは、悲しきかなほぼ満員御礼の騒(ざわ)めきにかき消され、力なく土俵に吸い込まれていった。

 次郎は音痴――好角家たちが囁く噂の真偽を先代立呼出の拓郎に聞くと、冒頭のような言葉が返ってきた。

「本人も呼び上げが苦手なことは入門当時から気にしていたみたいですよ。呼出の一番肝心な仕事ですからね。本来、『なんとかやぁ〜まぁ〜』って、語尾で音程を上げないといけないんだけど、次郎さんは『なんとかやーまー』って、下がっちゃう。私は同部屋だったので、周りから『拓郎もちょっと教えてやれ』とか随分言われていました」(拓郎)


 

 手厳しい言葉は続く。

「人目が気になるならカラオケで練習したっていい。私も練習に誘ったことがあるんですが、向こうからは『お願いします』と言ってこなかった。そういう点では残念でしたね。結局恥をかくのは自分ですよ。親方衆がどういうつもりで推薦したのか知りませんが、横綱、大関が土俵に上がるにふさわしい呼び上げがあるわけですよ」(同前)