これまで草や野菜など本来の釣り餌とは逸脱したモノで魚を釣ってきたが、私の中で未だに謎に包まれた餌(釣法)がある。

 夏の風物詩「スイカ」を使った釣りだ。


スイカ。これを魚が食べる?

 皆様はご存じだろうか。房総半島や三浦半島、また北陸など日本海側の一部地域ではスイカを餌にしたクロダイ釣りが行われているらしい。実際スイカ釣法をされる方に遭遇したことやSNSでの釣果情報を見かけたことはないのだが、昔は釣り情報誌に載るほどクロダイ狙いのスタンダード釣法であったそうだ。しかも、釣れる個体のほとんどが大型で驚くほど簡単なのだとか。

 おそらくスイカの高騰や配合餌の選択肢が増えたことで、愛好家が減ってしまったのだろう。今では目にする機会がなく、スイカ釣法は「昔の釣り」という印象が強く、本当に釣れるのか不明な伝説的存在となっている。

 なかば「都市伝説」と化してしまったスイカ釣法で果たしてクロダイは釣れるのか? 独自の考察も交えてその真相に迫ってみたい。

スイカを刻んで撒くダイナミックな釣り

 この釣法の基本は、スイカ丸々1玉を1〜2cmのサイコロ状にカットして、そのままコマセと付け餌にしてクロダイを狙う。

 角切りにしたスイカは、海に撒くと浮力が高くて表層を漂うため、クロダイが身体を反転させながら捕食するそうだ。

 その際に「ハネ」と呼ばれる波紋ができる様子から「ハネ釣り」と呼んだり、スイカがぽかんと浮かぶ見た目から「ポカン釣り」とネーミングする地域もある。またスイカを潮に乗せて沖に流す必要があるので、潮通しの良い釣り場の選択も重要となる。

 そうは言っても、クロダイはかなり警戒心の強い魚だ。表層の餌を捕食するタイミングは、海面に小魚が群がっていたり、多毛類の産卵(バチ抜け)のようなお祭りと形容されるシーズンでしか見たことがない。正直なところ釣れるイメージがまるで湧かなかった。