それまで、大陸間弾道弾ミサイル(ICBM)の発射、核実験などで緊張状態だった南北関係だが、北朝鮮の金委員長の実妹・金与正(キム・ヨジョン)氏が、韓国を訪れて平昌五輪の開会式に出席。南北の選手団がそろって行進し、女子アイスホッケーでは南北合同チームで出場したことなどで友好ムードを演出した。

 その後、南北対話が始まり、史上初となるトランプ前米大統領と金委員長の米朝会談が実現した。五輪外交という成功体験があるため、東京五輪を“第2の平昌に”という思惑があるというわけだ。

「金与正来日」というカード

 東京五輪をめぐっては昨年11月、韓国の国会議員でつくる韓日議員連盟の金振杓(キム・ジンピョ)会長が韓国「中央日報」のインタビューで、「金正恩氏が東京五輪に出席するなら招待も可能と日本政府側が表明した」と述べ、日本政府が否定する騒動もあった。ソウル在住のジャーナリスト、朴承珉氏が解説する。

「主催国の菅首相と、文大統領、金委員長、バイデン大統領の4人が並んで五輪開会式に出席すれば、南北平和ムードの世界的なアピールの場になる。しかし、金委員長はこれまで大勢の国家首脳との会談はしたことがないし、“偉大な指導者”がほかの首脳と同列で並ぶ会談は北側が拒否する可能性が高い。

 もし、北朝鮮に東京五輪を利用するメリットがあるとすれば、アメリカの経済制裁を撤回させることくらい。その場合でも、文大統領の強いオファーやバイデン新大統領側からのアプローチを受ける形で、たとえば平昌のように金与正氏を特使として派遣するといった形になるでしょう」

 東京五輪をめぐっては、新型コロナの感染拡大で、欧米メディアを中心に中止をめぐる報道が相次いでいるが、東京五輪の開催は、文大統領にとっても悲願のようだ。

バイデン大統領が文大統領を不愉快に思う理由

 さらにもう一つ、文大統領の発言が軟化した背景にあるのが、1月20日に就任したアメリカのバイデン大統領へのアピールという側面だ。前出の黒田氏が解説する。