インターネットではクオリティよりもリアリティのほうが重要なんだと実感

――業界屈指のアイドルオタクとか、セブ島に勝手に支社つくろうとした元社員とか、個性豊かな面々が魅力的に紹介された記事でしたね。

塩谷 人間らしい欲望をもっている人たちにすごく惹かれるところがあって、そうした人に沢山触れられた興奮をそのままにブログで伝えました。すると、会社で自分が一文字一文字間違わずに作ったキャンペーンサイトより、誤字もあって写真の解像度も低いブログの記事のほうが何千倍も読まれた。インターネットではクオリティよりもリアリティのほうが重要なんだと実感しましたね。

 その頃からフォロワーがどんどん増えていって、会社では忙しすぎて身体を壊したこともあり、2015年に独立しました。

――この頃から「バズライター」として注目を集めはじめますね。

塩谷 はい。いろいろな案件を手掛けましたが、たとえばクロレッツの広告にからんで小室哲哉さんの曲に歌詞を書かせて頂いたり、菅本裕子さん(ゆうこす)のインタビューが注目されたり、大阪市からの「梅田をバズらせてほしい」という依頼では、「梅田は日本一のショッピングタウンだ! 新宿や原宿に行くよりも梅田にはすべてが集まってる!」みたいな目線で、私がすべて足を運んでショッピングエリアを網羅した記事がバズったりしました。

サステナブルとは程遠い消費生活をしていました

 当時は、どうすれば数字が伸びるのか?という点を試行錯誤していました。やはり顔写真が出ているサムネイルだとクリック率が上がるな、しかも派手目な服のほうがより目立つな……と、「やりたいこと」よりも「求められるもの」に重きを置いていましたね。というのも、フリーマガジン時代、せっかく命を削ってつくったのに、1万部の紙の束を運び切れずに、余らせてしまうことがありました。どれだけ良いものを作っても、届かなければただのゴミだと痛感したんです。だから、もう読者に届かせるためなら何でもする!という精神で、服も派手なものを買いまくってたんです。

 購入していたブランドはユニクロからコム・デ・ギャルソンまで幅広かったですが、当時は金銭感覚が完全におかしくなっていて、1ヶ月に10着は買って、月に10万〜20万は使っていましたね。買うお金は惜しくないけど、クリーニング代はもったいない、2、3回着たらすぐ人にあげてしまう、そんなサステナブルとは程遠い消費生活をしていました。

 当時の私にとって服は、「映える」「バカにされない」ための戦闘服。打ち合わせ先で「私はそれは嫌です」「こうじゃなきゃ面白くありません」と強く意思表示をしたいのに、フリーランスで、さらに20代の女性だったからか、相手にされないことも多々ありました。そこで、会社員だと選ばないような強い色彩の服、金属系の服ばかり手に取るようになり……。派手なファッションに身を包んでいれば、発言が治外法権になりますから(笑)。