必死にお金を稼いできたのに、ゴミしか残っていない

――そんな生活の価値観が変わった転機は何だったのでしょうか。

塩谷 2017年、東京からニューヨークに引っ越すとき、荷物を送る運賃がすごく高いので自分にとって本当に必要なものを厳選したら、段ボール3箱分くらいしかなかったんです。処分するものの山を見て、いったい何のために働いてきたのだろう、と自問しました。

 こんなにも忙しく、何度も体調を崩しながら、必死に睡眠時間を削ってお金を稼いできたのに、結果、ゴミしか残っていない。本当はゴミと呼ぶにはもったいないものばかりでしたが、自分の人生にいらないと思った瞬間にそれはゴミでしかない。私はいままで何をしてたのだろうと、長い夢から覚めた気分になりました。

 そして本にも書いた、ロンドンでの特別な傘との出会いがあり、「これは何度でも直して、一生大事に使っていきたい」と心から思ったんです。これからの人生はそうやって大切に選んだものを積み重ねていこう、5年、10年先を見越して、一生使えるものを冷静になって買わないと、働いている意味がわからないなと。

商品の裏側を考えてこなかったことを恥じました

――海外移住をきっかけにした断捨離で、消費のあり方が大きく変わったんですね。

塩谷 まさに断捨離で、そこからミニマリストとしての生活が自分にはフィットするのではないかと思い、服も少なくなっていきました。そしてその1年後くらいに、アイルランド留学でAllaという同世代のファッションデザイナーに出会って大きな衝撃を受けたんです。

 Allaは非常に思慮深い女性で、自分がファッションをつくる責任や、服が社会のなかでどう使われるか、どう捨てられるかまでの責任も考えて、エシカルな仕事の仕方を探求していました。対して私は、自分の消費行動がどれだけ地球に負荷を与えてるのか十分に考えてもみなかったし、インフルエンサーとして消費を促進することを是としていた。少しでも商品の値段を安くしようとする企業努力は素晴しいと思っていたし、過剰包装だったり、安価な商品をつくり出すためのグローバルサウスへのしわ寄せという暗黒面を直視してこなかった。

 彼女と出会って、私は商品の裏側を考えてこなかったことを恥じました。そして『ザ・トゥルー・コスト 〜ファストファッション 真の代償〜』のようなドキュメンタリー映画を観て、ファストファッションが生む環境問題や構造的な搾取の深刻さに、ショックを受けました。

 しばらくはただ落ち込んでいたのですが、ニューヨークのパッケージフリーショップやエシカルなファッションをビジネスにしている方々と出会うなか、環境問題はこんなにもポジティブに、そしてスタイリッシュに取り組むことができるんだと鼓舞されました。ビジネスとして生きていけるだけの利益を上げながらも、たとえば「Zero waste」のようなゴミを減らしていく運動を「我慢」ではなく、みんな楽しんでやっている。