世界を中国の思い通りにすることは許さない

 そんな中国に対抗する安全保障および経済の枠組みとして、QUAD(日米豪印戦略対話)の役割が期待されている。だが、ロシアによるウクライナ侵攻について、インドと他の加盟国の間ではロシアに対する温度差が指摘されている。この点について、エマニュエル大使はどう受け止めているのか? すると、「その質問、冗談でしょう?!」といたずらっぽく笑い、QUADの協調に絶対の自信を見せた。

大使:QUADは確立された枠組みであって、考えが似通った国々によって構成されています。根幹の目的、そしてベースになっているのが、「自由で開かれたインド太平洋」の維持です。

 中国はQUADを警戒しています。なぜならQUADは、中国に同盟国が無いことや中国が孤立していることを際立たせ、さらに世界のあり方を中国の思い通りにすることを許さないからです。軍事的・経済的な理由だけではありません。アメリカ、日本、オーストラリア、インドが一体となった「政治力」が中国にとって脅威なのです。脅威と見られることはQUADの意図するところではないのですが、中国は脅威とみなしています。その理由は、世界のあり方について、QUADによって中国の主導権が奪われると見ているからです。

――では、インドとの温度差は克服できると?

大使:ずばりYESです。

安倍元首相のレガシー

 インタビューの中でエマニュエル大使が繰り返し言及したのは、「自由で開かれたインド太平洋」という言葉だった。

大使:「自由で開かれたインド太平洋」……この哲学・戦略の名付け親は、まさに安倍元首相でした。この言葉は、いまや誰もが口にする言葉です。オーストラリアや日本のリーダー、インドの政府関係者、欧州の人々に至るまで、皆が口にしています。今では我々は何の疑問も持たず日常的にこのフレーズを使っていますが、これこそ安倍元首相のレガシーと言えると思います。

 私たちは「自由で開かれたインド太平洋」やQUADなど、安倍元首相が作り我々に残してくれた枠組みの中で、様々なことを実行に移していきます。安倍元首相は素晴らしいレガシーを残しました。

――では、「自由で開かれたインド太平洋」のために、日米同盟はどのように進化するべきなのか?――エマニュエル大使が忌憚なく語ったインタビュー「中国は信頼を裏切った」は、8月10日発売の「文藝春秋」9月号に全9ページにわたって掲載されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2022年9月号)