新型コロナウイルスの感染拡大が、エンターテインメントの世界を直撃している。

人気バンド「SEKAI NO OWARI」は、9月に予定していたドームツアー全5公演を中止。5月27日に発売予定だったベストアルバムのリリースも来年に延期した。

それでも、彼らには不思議なほどに悲壮感がない。

「不自由を自由に転換していけるタイミング」(Saori)

「“ライブの代わり”ではなく対等になれるようなコンテンツを」(Fukase)

6月1日に新曲『umbrella』をデジタル先行配信するセカオワにコロナの影響を尋ねると、予想外に前向きな言葉が返ってきた。

(取材は緊急事態宣言解除前の5月下旬にオンラインで実施した)

意外とやれる

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SEKAI NO OWARI(左からNakajin、Saori、Fukase、DJ LOVE)


――みなさん、今はどんな風に生活されているんですか?

Fukase:自分なりに趣味を見つけたり、家でできる作品づくりをしてみたりとか。割とこの間のルーティンがしっかりできてしまって、普通の生活に戻れるのか?と心配しているぐらいです。

Nakajin:僕はもともと、デスクワークでパソコンに向かっていることが多かったので。このコロナの生活の中でも、意外とやれることはやれている感じです。

DJ LOVE:ミーティングなどもリモートになってます。KDDIさんのバーチャルイベント(「#渋谷攻殻 NIGHT by au 5G」)にもリモートで出させていただいて。

5Gのイベントだったので、たぶんコロナ関係なくそういう風にやったとは思うんですけど。

このタイミングで、何か新しいものがいろいろ生まれてきてるなっていうのを、目の当たりにしてる感じです。

子どもと過ごす時間

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Instagram: @saorifujisaki


Saori:やっぱり生活が単調になっていくので、(オンラインで)ピアノを習い始めたり、英語のレッスンをしたりとか刺激を入れながら。

だんだんルーティンも決まってきて、この生活が結構気に入りつつあります。

あとは、小説やエッセーを書いたり、レコーディングもリモートでやったりしてますね。子どもがいるので夜も早めに寝るし、朝も8時までには絶対に起きるし。

以前の方がよっぽど不規則な生活をしてたなと思います。

――保育園の利用も制限されているなかで、リモートで働きながら子どもの世話もするのは大変だという人も多いですが、Saoriさんはいかがですか。

Saori:楽しもうと思ってるところと、大変だなと思ってるところと両方あります。

子どもと一緒にいられる時間が増えたのは、楽しいことのひとつですけどね。今までは、あまり午前中に公園に連れて行ってあげたりできなかったので。

準備は整っていた

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6月1日に先行配信した『umbrella』


――音楽制作のあり方も変容を迫られている部分があると思います。在宅でのレコーディングに関して苦労することはないですか?

Fukase:僕らはもともと、生バンドっぽくない。そもそもドラマーとベーシストがいない、打ち込みっていう形式を取っているので。

言ってしまえば、バンドの形式をとったクリエイター集団。なので以前から、ほとんどLINEでのやりとり、音源データのやりとりでつくっていたんです。

各個人に直接電話して、「こういう感じにアレンジしてほしい」「こうやって楽器を入れてほしい」みたいな。

セッションをやることも当然あるんですけど、一番最初のテンポを決めるとか、本当にざっくりした雰囲気をつくる時ぐらいで。

そもそも、「会ってスタジオで録る」ということにそこまで重きを置いてなかったので、スムーズといえばスムーズでしたね。

たとえば海外のアーティストとコラボレーションする際も、実際にスタジオ入ったりするとお金も時間もかかっちゃって大変。

ここ数年、そういう形でデータのやりとりをしてきたので、僕らにとっては準備が整っていたというか。すごくやりやすかったです。

リモートでレコーディング

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Nakajin:レコーディング・スタジオやリハーサル・スタジオに集まれないなかで、僕の周りのミュージシャンの皆さんも自宅を仕事場化する人がすごく増えてます。

宅録機材をどんどん買いそろえて、新しい環境を整えて。コロナ禍が過ぎ去ったとしても、そうやって一度できた環境はなかなか変わらないと思うんですよね。

――レコーディング作業は、具体的にどうやって進めていったのでしょう。

Saori:緊急事態宣言が出た次の日ぐらいからレコーディングをする予定だったんですけど、スタジオに行くことができなくなってしまって。

それで、つくった楽曲の楽譜をストリングスや管楽器の奏者さんに送って、自宅で録音していただいたものを送り返してもらって…という風につくりました。

新曲の『umbrella』『Dropout』はコロナの前に完成していたのですが、(レコーディングを予定していた)その曲は制作時期が完全にコロナとかぶってしまったので、リモートで進めました。

「ステイホーム」「おうちにいよう」みたいなことが歌詞になってるわけじゃないんですけど、奏者さんの自宅で録っていただいたので、やっぱりその環境は音に反映されているかな、と思います。

メンバー4人でLINE

LINE LIVE、ありがとうございました。みんなからのメッセージ、ずっと読んでます。ツアー中止・ベスト延期は苦渋の決断で、伝える時に色んな感情で声が少し震えたけど、こんなに沢山の想いに支えられてきたのかと改めて実感できました。改めてありがとうございます。

— Nakajin (@Nakajinsekaino)

――レコーディング自体はなんとかなるとして、バンド内のコミュニケーションに支障は出ないものですか?

Saori:4人で、夜にLINE電話をつないで話したりとかしてますね。

Fukase:わりと超真面目な話ですけどね。僕、いわゆるリモート飲み会はやったことないんですけど、メンバーとはLINEで飲みながら話をしたりしてますね。

この先、ライブというものがどうなっていくかわからない。リモートで無観客の映像を流す以外に、何ができるだろう?とか。

LINE LIVEやインスタライブではどういう内容の話をしたらいいだろう?とか。そういう話をしてます。

「通訳」はSaori

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Saori


――飲みながらも、真剣な仕事の話をされているわけですね。

Fukase:割と具体的な仕事の話ですね。あんまり世間話をしないバンドな気がします。特に男性陣2人と僕は世間話、身の上話みたいなのを全然しない。

Saori:確かにね。

Fukase:だって俺、Nakajinが結婚した話とか知らなかったもんね。なんならニュースで知ったんじゃないか、ぐらいの感じだったからな。

Nakajin:そんなことはない(笑) ちゃんと連絡してます!

――メンバー間で情報に齟齬が出てますが(笑)

Fukase:男性陣はなぜか、Saoriちゃんを介して話すんですよ。

――通訳が間に入る感じ。

Saori:私は結構、NakajinともLOVEさんともFukase君とも話をしてますね。

Nakajin:Saoriちゃんが結構グイグイなんですよね。

Fukase:グイグイなんだよ。男同士だと意外とそういう話はしない。しょうもない話ばっかりで。大切な話はサラッと終えていく3人です。

即レスのDJ LOVE

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DJ LOVE


――Fukaseさんは以前、メンバーが共同生活する「セカオワハウス」のリビングで、DJ LOVEさんがけん玉をしているのを見るのが好きだと話していました。いまは別々の生活ですが、長いこと会えないと寂しいのでは?

Fukase:だいたい僕が仕事に全然関係ない、どうでもいい写真をグループLINEに送るんです。散歩してる時に見つけた、何かよくわかんない張り紙の写真とか。

Nakajin:来た、来た。よくわかんないまま終わっちゃったけど。

Fukase:そういうのに関しては、LOVEさんはちゃんと早めに返してくれる。SaoriちゃんとNakajinは、割とスルーしてくるんで。

LOVEさんの大きな仕事ですよね。僕のしょうもないLINEに、なるべく早い速度で返すっていうのは。

友達同士みたいに

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Instagram: @fukase


――即レスする優しさ。

DJ LOVE:アスファルトから生えてきてるタケノコとかね。

Fukase:ド根性タケノコを見つけて、写真撮って送ったり。LOVEさんから「タケノコってめっちゃ生えるの早いんだよね」って返信が来てた気がする。

DJ LOVE:確か電柱のそばかどこかに生えてて、「これ危なくない?」みたいな話でした。

Fukase:めっちゃどうでもいい。僕がそういうくだらないのを送って、LOVEさんが反応して、Saoriちゃんにはスルーされるっていう構図です(笑)

Saori:あはは。どうでもいいなと思って、閉じちゃうんだよね。

Fukase:あとは『リングフィット アドベンチャー』っていうフィットネスのゲームをみんなやってて、毎日のようにLINEで情報交換してますね。

「あの筋トレ、めっちゃ楽だよね」「あれは辛いから避けたいよね」とか。

――ほとんど友達同士みたいな。なんだ、仕事以外の雑談もたくさんしてるじゃないですか!

Fukase:めっちゃ友達同士みたいにやってますね。

「バーチャル渋谷」に見る可能性

cluster公式チャンネル

#渋谷攻殻 NIGHT by au 5G


――自分たちの手でライブハウス「club EARTH」を立ち上げるなど、セカオワは観客と繋がれる場所を大切にしてきたバンドだと思います。満足にライブができない今の状況を、どう受け止めていますか。

Fukase:僕らがどうあがこうが悩もうが、どうにもならない問題ではあるんですよね。悔しがっても前には進めないので。

逆に今だからこそ、今しかできないことって何だろう?という模索はずっと続けていて。たとえば、DJ LOVEが出演していた「#渋谷攻殻 NIGHT」の…

DJ LOVE:「バーチャル渋谷」だね。

Fukase:そう、「バーチャル渋谷」。あのイベントを見て。こんなにしっかり渋谷が再現されているんだ、すごいなって。

(オンライン空間に)ステージもあって、DJ LOVEがバーチャルでトークショーに参加してたんですけど。

こういうのって新しい形だし、ライブでやったら楽しんでもらえるんじゃないかと思って。『フォートナイト』でマシュメロやトラヴィス・スコットがやっていた実例もありますし。

《人気ゲーム『フォートナイト』内で、DJのマシュメロは2019年2月、ラッパーのトラヴィス・スコットは今年4月にバーチャル・コンサートを開催。ともに1000万以上のユーザーを集め、大きな反響を呼んだ》

Travis Scott

『フォートナイト』でバーチャルイベントを敢行したトラヴィス・スコット


現実の世界では、東京ドームの上から何かを吊すことはできないし、お客さんの頭上に何かをつくることも難しい。

だけどバーチャル世界なら、現実では法律的に無理だったものも含めて、限界を超えていけるじゃないですか。「バーチャル渋谷」を見ながら、ぼーっとそんなことを考えてました。

ライブの「代替品」ではなく

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Nakajin


――バーチャルだからこそ、できることもあると。

Fukase:そうですね。ただ単に新しいからやってみようというより、「ライブの代わり」じゃなくて、ライブと対等になれるようなもの。

「このコンテンツとして、すごく面白いよね」っていう。もしかしたら、そういうものができるタイミングなのかなと。

Nakajin:リモートのレコーディングの話と一緒で、 「ソーシャルディスタンスを保たなくても大丈夫」となった後でも、やっぱり人々の意識はそんなに簡単に元に戻るものじゃないと思うんですよ。

どれだけ長引くか、どれだけ大きくなっていくかもわからないなかで、ただひたすら変化を見つめている感じです。

僕もDJ LOVEのオンラインイベントとか、『フォートナイト』含めいろんなバーチャルライブとかを見て、すごいな、面白いなと思ったんですけど。

一方でライブってやっぱりダイレクトの良さがあったんだな、ということも再認識しました。

インスタライブで聴ける歌やDJもすごくいいんですけど、生モノの良さって代えられないものがあるなって。

Fukaseの言う通り、ひたすらリモートでそれを再現して「代替品」をつくる方向よりは、まったく新しいものが生まれてくるんじゃないかなと。

今年から5Gが普及していくタイミングで、VR世界のライブがどう進化していくのか。注目していきたいと思ってます。

感じた音楽の必要性

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――「不要不急」というのは非常に残酷な言葉だと思いますが、エンターテインメント全般がそのように言われてしまう状況にあります。

Saori:エンタメって不要不急なんじゃないかと言われてはいるんですけど。じゃあこの1カ月半の間、音楽も映画も何の芸術もなしに過ごせたかというと、きっとつらかっただろうなと。

音楽は必要だなっていうのは今回、より感じていて。今のこの不自由な環境は、ある意味ではすごく自由になれる環境だとも思うんです。

私たちはデビュー前に「club EARTH」というライブハウスをつくりました。自分たちで木を切って、ステージをつくって。自分たちでご飯をつくって。すごく貧乏な時にファーストアルバムを出した。

でも、その時すごく不自由だったから、今の方がいいものがつくれるかと言ったら、それはまた全然違うと思っていて。

お金もなくて、機材も揃わなくて、ノウハウもなくて…。あの当時、不自由だったからこそ、できたものがあった。

だから今も、不自由を自由に転換していけるタイミングだなって感じてます。

Fukaseが言うような、ライブとはまた全然違う、今しか思いつかないようなアイディアを実行する時だと思うし。

Nakajinの言うように、自分たちでレコーディングができるようになる転機でもあると思うし。

接点は無限

提供 / Via universal-music.co.jp

6月24日に発売するシングル『umbrella / Dropout』


Fukase:難しい問題ですけど、ライブにしても何にしても、安全第一が前提で、そこに一切無理をしないと僕らは決めているので。

音楽でもほかの芸術でも、実際に会わなくてもできるものって結構いっぱいあって。皆さん、LINE LIVEでアコースティックの演奏を披露したりしてますよね。

逆にその方が距離感が近くて、ライブは行かないけど、LINE LIVEならちょっと見てみようかなっていうライトな層もいたり。

ライブは「不要不急」ということになると思うんですけど、それ以外のコンテンツも無限大にある。

もちろんライブは大切ですが、ライブ以外でも音楽にできること、寄り添えることはたくさんあるなと思ってます。

《セカオワは6月24日に発売するシングル『umbrella / Dropout』の特典として、抽選で100人がZoomでメンバーと話せる「オンラインミート&グリート」を開催する》

DJ LOVE:3人の後に話すの、すごい難しいんですけど(笑)

フィジカルな楽しみであるライブがいつ再開できるかは、世界的にもわからない状況ですよね。

すべてデジタルにシフトしていくかっていうと、たぶん違うと思うんですけど。「楽しみ方の幅が増えた」っていう風にポジティブな捉え方もできるのかな、と思いますね。

バーチャルフェス開けたら

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Fukase


――どうしてもできないことに目が向いてしまいがちですが、できることもたくさんあるという発想はポジティブでいいですね。

Fukase:僕らのバンドだけでなく、日本中、世界中がそういう状況なので。

ファンもライブに行けない分、「新しい楽しみ方にトライしてみよう」という気持ちになってくれている。間口が広がって、僕らが新しい提案をしても受け取ってもらいやすいんじゃないかなって。

さっき話したバーチャルのライブも、僕はフェスにしたいと思ってるんです。

世界全体の問題だから、逆に仲間も見つけやすいというか。「こういうの、やろうよ」って声をかけた時に、「やろう、やろう」って言ってくれる人もきっと多い。

クリエイター同士、一緒に前を向けるタイミングではあるな、と思いますね。

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SEKAI NO OWARI


〈SEKAI NO OWARI〉 Nakajin、Fukase、Saori、DJ LOVEの4人組。2010年、『幻の命』でインディーズデビュー。翌年『INORI』でメジャーデビューした。代表曲に『スターライトパレード』『RPG』『Dragon Night』など。2014年から5年連続でNHK紅白歌合戦に出場。6月24日にシングル『umbrella / Dropout』をリリースする。