新型コロナウイルスの影響が続くなか、LGBTと呼ばれる性的マイノリティの人が抱えている不安や医療現場の現状について考えるイベントが5月17日、オンラインで開催された。

病院の看護部長を対象にしたアンケートでは、患者本人の意識がないときに治療方針の決定に関われる「家族」の範囲が、医療機関や対応する職員によって違い、多くの場合「同性パートナー」が含まれていないことがわかった。

医療機関で「家族」と扱ってもらえるか

Marriage For All Japan


イベントを主催したのは、同性婚の実現に向けて活動している一般社団法人「Marriage For All Japan」。

同団体では4月6〜30日にかけて、新型コロナウイルスの影響で性的マイノリティの人が直面している不安や困難についてアンケート調査し、国に対応を求める要請書を提出した。

イベントでは、同団体のアンケートでも多かった「入院や緊急の治療が必要な時に、医療機関で同性パートナーを家族扱いしてもらえるか不安」という問題を中心に、医療機関の現状やそれぞれができることについて話し合われた。

Marriage For All Japan

Marriage For All Japanが実施したアンケート調査の結果


日本では同性カップルの結婚が認められていないため、同性パートナーと法律上の「家族」になることができず、命に関わる重要な局面で、医療機関に「家族」として扱ってもらえないケースが少なくない。

その背景には、多くの医療機関で「家族」の範囲が曖昧にされ、そのときの状況や対応した職員の裁量に任されてしまっている現状があると、イベントに登壇した石川県立看護大学看護学部講師の三部倫子さんは指摘した。

医療機関や状況によって違う「家族」

Marriage For All Japan

石川県立看護大学講師の三部倫子さん


三部さんは昨年12月、東京都、石川県、静岡県の病院で働く看護部長を対象に、LGBTの患者対応についてアンケート調査した結果を発表した。

その中で、それぞれが勤務する病院で「患者さんの家族の範囲を文章で明文化していますか?」という質問に「いいえ」と答えた割合が、回答数252件のうち83.7%にのぼった。「はい」と答えた割合は15.1%だった。

「LGBTの患者対応についての看護部長アンケート」報告書


また、成人している患者で、意識がないなど本人に判断能力がない時に「手術の同意を誰から得ていますか?」という問いでは、「親族のみ(配偶者・親・子・それ以外の親族」と回答した割合が44.8%。

「配偶者に相当する内縁の同性パートナー」も含むと答えた人が30.6%だった。

「LGBTの患者対応についての看護部長アンケート」報告書


一方、患者本人の意思を確認できない時に、患者に代わって誰が治療方針を判断するべきかについては、厚生労働省が「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」で方針を示している。

そこでは、「『家族等』が本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする」 と書かれている。

さらに「家族等」とは、「本人が信頼を寄せ、人生の最終段階の本人を支える存在であるという趣旨」のため、「法的な意味での親族関係のみを意味せず、より広い範囲の人(親しい友人等)を含み、複数人存在することも考えられる」と定義されている。

三部さんの調査で、このガイドラインについて知っていると回答した割合は約8割、そのうち、ガイドラインの「家族等」の定義を知っていると回答した割合は、約6割だった。

他にも調査では、「LGBTの患者のことで何か困ったことがあるか、部下から報告を受けたことがあるか」という質問で、「いずれも該当しない」と答えた割合が多かったと三部さんは語る。

「中には、自由記述で『職員にも自分の周りにも(LGBTの当事者が)いないので、ピンとこない』といった回答をされている看護部長さんもちらほらいて、トラブルがあることをまず認識していないんだなということも伺われました」

事前に緊急連絡先カードやかかりつけ医を

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浅沼智也さん


看護師として働きながら、LGBTQ当事者がより生きやすい社会になるよう活動している浅沼智也さんは、「医療従事者によってLGBTやSOGIに関する知識のばらつきはあり、なるべく早く研修をやって医療のあり方を変えていく必要はあると思います」と語った。

浅沼さんが勤務する病院では、本人が望めば同性パートナーも内縁のパートナーも、治療方針を決める「キーパーソン」になることができるよう対応をしている。

しかし、本人の意思が確認できず、事実確認ができないときは対応が難しくなり、法的な親族が優先されるケースを多く見てきたという。

では、こうした状況の中で、当事者はどのように対策することができるのか。浅沼さんはイベントで、次の例を挙げた。

・緊急連絡先カードやパートナーシップ証明書など、自分の意思を外部に伝えられるものを持参しておく。

・理解のある病院を事前に探しておく。自治体の中には、各病院での同性パートナーの対応についてホームページに記載している自治体もあるので、そうしたページがあるか確認してみる。

・かかりつけの病院・クリニックを作っておき、事前に状況を説明。もし入院や手術が必要な時には、主治医に間に入ってもらえるようにする。

・可能であれば、必要に応じて、財産管理の代理や看護の委任を盛り込んだ「任意後見契約」を結んでおく。

浅沼さんは「医療現場は、患者さんの意思を一番に大切にしています。患者さん本人が意思表示することができれば、同性パートナーがキーパーソンになれることも多いので、事前に用意していただくことはとても大切なことだと思っています」と話した。

また、実際に入院や治療が必要になった場合は、可能な範囲で、医師や看護師に自分たちの状況を説明してみることも大切だという。

「看護師の中でも柔軟性を持って対応してくれる人も多くいます。同性パートナーを自分のキーパーソンにしたいと思った時に、言いにくい場合もあると思いますが、勇気を出して言ってくれれば、看護師も味方になります」

「昔と比べて医療機関もどうしたら性的マイノリティが安心安全に受診できるか考えていると思うので、双方が安心して治療につなげていくことができればいいなと考えています」

大切な人との関係を考えるきっかけにも

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大阪市の「LGBTと女性のためのリソースセンター QWRC」では、2006年ごろから緊急時に連絡をしてほしい相手の名前と連絡先を記入して、持ち歩ける「緊急連絡先カード」を配布している。

QWRCの桂木祥子さんはイベントで、緊急連絡先カードを書いておくことは、万が一の時の備えになるだけでなく、パートナーや自分の大切な人との関係について考えるきっかけにもなると語った。

「自分に何かあった時のことってあまり考えたくないことかもしれませんが、実際にはいつ何が起こるかはわかりません。自分は誰に連絡してほしいのか、相手と話し合うプロセスで大切な人に気持ちも伝わるし、相手の気持ちも一緒に考えていくことができると思います」


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