「桜を見る会」前日に安倍晋三首相の後援会が主催した「前夜祭」をめぐり、首相の国会答弁と、会場になったホテル側の話が異なっているとして、野党が衆院予算委員会で追及を続けている。

立憲民主党の辻元清美議員が、「ANAインターコンチネンタルホテル東京」(東京・赤坂)から得た文書での回答をもとに、これまでの安倍首相の答弁との食い違いを指摘。首相は、安倍事務所が電話で改めてホテルに確認したとして野党側の文書を否定するも、書面での回答には応じない構えを示し、議論は紛糾した。

そうした中、ANAホテルの広報担当者が、BuzzFeed Newsの取材に「一切開示できない」などとメールで答えた。回答全文を紹介する。

時事通信

衆院予算委員会で事務方と話す安倍晋三首相(左)=2月17日


なぜ野党は首相を追及するのか

安倍首相の後援会は、2013年から計3回にわたり同ホテルで前夜祭を開催した。

ただし、安倍事務所の政治資金収支報告書には、それに関連する記載が一切なく、これまで野党がたびたび指摘してきた。

政治資金規正法違反と公職選挙法違反(寄付行為)の疑いがもたれるからだ。

前者は、もし事務所側がホテル側に会費を支払っている場合に問題となる。「収支」として政治資金規正法に基づいて報告書に記載しなければならないためだ。

後者は、仮に事務所側が会費の一部を負担していると問題になる。

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「桜を見る会」であいさつして回る安倍晋三首相(中央)=2019年4月13日


この点について、首相側は、前夜祭当日の流れを次のように説明してきた。

会費は「ホテル側が設定した」1人5000円で、安倍事務所の職員が参加者から会場で集めた。

それと引き換えに、ホテル名義の領収書をそれぞれに手渡した。事務所側が集金してホテルにその場で会費をまとめて渡した形で、あくまでも参加者からホテルに支払った。事務所側に収支は発生していない。

だから、報告書への記載義務は生じないとの主張だ。

首相とホテルの主張の食い違い

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安倍首相に質問する立憲民主党の辻元清美議員(左端)=2月17日


2月17日に辻元議員が矛盾点を指摘したのは、安倍首相が述べてきた次の2点だ。

・領収書は、ホテルの担当者が金額を手書きし、宛名は空欄だった

・ホテル側から見積書や明細書の発行はなかった

辻元議員は、ホテル側に文書で質問し、文書で回答を得たといい、国会でその内容を明らかにした。同日、安倍事務所の職員が電話でホテルに改めて確認し、安倍首相が答弁でどう反論したかもあわせ、以下に記す。

・ホテル「(見積書や明細書を主催者に発行しなかったケースは)ございません」

安倍首相「私の事務所の職員はホテル側と事前に段取りの調整を行ったのみであり、明細書等の発行は受けていない」

・ホテル「(個人・団体を問わず、宛名を空欄のまま領収書を発行したケースは)ございません」

安倍首相「領収書は宛名を『上様』として発行する場合があり、夕食会でも上様としていた可能性はあるとのこと」

・ホテル「(主催者が政治家および政治家関連の団体であることから、対応を変えたことは)ございません」

安倍首相「(ホテル側は)辻元議員にはあくまで一般論でお答えしたものであり、個別の案件については営業の秘密に関わるため、(前夜祭のケースは、辻元議員が得た)回答には含まれていない」

ホテルに取材すると...

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主要野党欠席のまま開会された予算委員会=2月18日午前


しかし、こうした安倍首相の反論に対し、朝日新聞など報道各社の取材を受けたホテル側はさらに「反論」した。

前夜祭は営業の秘密に関わるため、辻元議員の回答には含まれていないとする点は「申し上げた事実はございません」と否定。

また、「『一般論として答えた』という説明をしましたが、例外があったとはお答えしていません」と答えたという。

こうした報道を受け、立憲民主党など野党は18日午前、首相側に書面での回答を要求して予算委員会を欠席。与党は主要野党が不在のまま審議を強行する事態に。

同日以降、菅義偉官房長官が安倍首相に代わって答弁し、「総理自身が17日に答弁をいたしました。それが全てだと思います」「ホテルとしては、正式な回答であった」などの考えを繰り返している。首相の答弁は議事録に残るので、文書での回答の必要はないとの見解も示している。

ANAホテル「一切開示できない」

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自民党の森山裕国対委員長=2019年9月26日


これを受け、BuzzFeed Newsは2月18日、ANAホテルに取材を申し込んだ。質問は「営業の秘密に関わるため、(前夜祭のケースは、辻元議員が得た回答には)含まれていない」というのは事実」「明細書や見積書を保管していないか」「『上様』宛として前夜祭の参加人数分の領収書を事前に用意していなかったか」など5点だ。

そして、ANAホテルの広報担当者から19日、メールで次の回答が届いた。以下、全文を載せる。

"ホテルとしてのステートメントにて回答申し上げます。

ANAインターコンチネンタルホテル東京では、日々ご利用いただく多くのお客様をお迎えしております。

当ホテルでは、お客様のプライバシーを尊重し、かつ各ご手配における守秘義務も遵守して営業を致しております。

催事・宴会の受託と実施につきましても、法令を順守して、対応を致しております。

個別のお客様に関わる個人情報および取引の詳細については一切開示することはできません。何卒ご理解のほどお願い致します。

日頃よりご利用いただいております皆様に感謝致しますとともに、引き続きのご利用をお待ち申し上げております。

ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。"

NHKによれば、自民党の森山裕・国会対策委員長が18日、記者団に対して「野党や報道機関が問い合わせたのはホテルの広報で、安倍事務所は、実際に仕事を頼んだ営業に尋ねたのだろう」としたうえで、ANAホテルの関係者が自民党本部に「来たと聞いている」と述べた。

「広報はマニュアル通りの回答をし、営業はいろいろあるので、それに基づいて話をし、ずれが生じたのではないか。ホテルのしかるべき人が大変迷惑をかけているということで、自民党本部に来たと聞いている」

この発言に対し、立憲民主党の安住淳国対委員長は、森山氏と国会内で会談し、「圧力と取られかねない」「看過しがたい。権力のおごりではないか」と抗議した。

その後、ANAホテルは、時事通信の取材に対して「国会での質疑に関しては、返答を差し控える」「個別の取引の詳細は一切開示することはできない」と回答したという。

これを受け、Twitter上では「圧力だ」との声がさらに噴出している。