猫の心臓病の中で発症率が高い心筋症。症状がわかりにくいことから気付かないうちに病状が進行して突然倒れ、そのまま命を失う可能性のある怖い病気のひとつといえます。心筋症の知識と早期発見のための習慣を王子ペットクリニック院長の重本 仁先生が教えてくれました。

心臓の筋肉に異常があり、心臓の機能が低下する病気


「心筋症=怖い病気」だけでなく、どんな病気なのか基本的なことをしっかり知っておくことが大切です。
心臓は、大部分が「心筋」という筋肉でできています。心筋症は、この心筋に異常があり、心臓のポンプ機能が低下することで血液の循環が悪くなる病気です。大きく分けて「肥大型」「拘束型」「拡張型」がありますが、とくに多いのが「肥大型心筋症」。心筋が内部に向かって厚くなり、心室が狭くなることで全身に充分な血液を送り出せなくなります。次に多いのが、心筋が硬くなってしまう「拘束型心筋症」で、心筋が薄くなってしまう「拡張型心筋症」は、まれな症例です。

荒い呼吸や咳をし、動きたがらないなど症状が出る場合も


初期症状はわかりにくく、とくに多い「肥大型心筋症」では、33〜55%が無症状という報告があるほど。悪化すると、呼吸が荒くなったり咳が出たり、うずくまって休んでばかりいたりなどの様子が見られる場合も。異変がまったくなく突然倒れるケースもあります。後ろ足を引きずるなど歩き方に異変があることも……。 ※写真はイメージです。

検査はおもに心臓超音波(エコー)、治療は内科的なものに


検査は、血液検査、心電図検査、レントゲン検査、心臓超音波(エコー)検査などをします。なかでも重要となるのが、心臓超音波検査で、近年では精度の向上により早期の心筋症も正確に診断できるようになりました。
治療は、根本的に治す方法がなく、投薬で進行を遅らせ、症状を緩和することが中心に。おもな薬は、心筋に作用して心臓の収縮機能を高める強心薬や血栓を予防する抗血栓薬になります。「肥大型心筋症」のレントゲン写真。左心房が拡大し、心臓が「バレンタインハート」と呼ばれる特徴的なハートの形状になっています。


心臓の検査を 定期的に受けるようにする


心筋症は残念ながら予防ができません。愛猫を守るためには、早期発見できるかがカギになります。飼い主さんができることを紹介しましょう。
心筋症は、通常の定期健診では判明しにくいので、特化した検査を定期的に受けることが大切です。血液検査の心臓マーカー(NT-proBNP)であれば、少量の血液を採るだけで検査ができるので、定期健診の血液検査時に追加してもいいでしょう。心臓マーカーが高値を示した場合には、超音波検査を受けるようにしても。

心拍数をできるだけ毎日測るようにする


正常な猫の心拍数は、安静時で1分間につき130〜160拍。運動や興奮時は、240拍くらいまであがることもありますが、安静時でも200拍以上が継続するなら、心臓に異常がある可能性が。心拍数は猫によって個体差があるので、愛猫の通常の数値を把握する意味でも、できるだけ毎日測り、少しの異常でも気付けるようにして。

猫の背後から、両脇の下に両手を入れて抱っこをして手に伝わってくるトクトクという鼓動を数えて。20秒間の心拍数を数え、その数を3倍にすれば1分間の数値になります。

抱っこを嫌がる猫は、立っている状態でも大丈夫です。同様に左右の脇の下から両手を入れて測りましょう。心筋症の知識と早期発見のための習慣をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか? 心拍数を測ることはぜひ毎日の習慣にして。そして、少しでも異変がある場合は、動物病院で診察を受けるようにしましょう。

重本 仁先生/東京都北区にある王子ペットクリニック院長。日本獣医畜産大学卒業。ペットへの負担を減らした治療・手術をメインに診療している。
参考/「ねこのきもち」2020年10月号『どの猫にも、突然死の危険が 怖い心臓の病気 猫の心筋症』(監修:東京都北区にある王子ペットクリニック院長 重本 仁先生)
文/Betty
撮影/Akimasa Harada、尾﨑たまき
撮影協力/猫と本 Miaw、保護猫カフェ「猫式」
※この記事で使用している画像は「ねこのきもち」2020年10月号『どの猫にも、突然死の危険が 怖い心臓の病気 猫の心筋症』に掲載されているものです。